「政治学」について、どんなイメージをお持ちですか?
難しそう?自分には関係ない?胡散臭い?
そうですね・・・、基本的に誤解や偏見に満ち溢れている気がします。
政治学にまつわる誤解として、政治学者の丸山真男がこんなエピソードを披露しています※1。
ある判事が、最高裁長官人事を巡る争いで、政治学者である丸山に政治的な術策の教えを乞うてきたそうです。丸山が困惑していると・・・
私の困惑の表情を読みとったその判事は、すぐ畳みかけて「あの、大学の政治学の講義ではそういう政治的な術策のことは教えないのですか」と訊いて来ました。私はすぐさま「冗談じゃありませんよ」と吐き出すように答えましたが、(中略)大学で講義する政治学というのは決して所謂政治的な術策ではなく、また現実の政治問題を直接対象とするのでもないこと
丸山真男『政治の世界』岩波書店、2014年、240-241頁。
このエピソードには、丸山が指摘するように、「政治」と「政治学」の関係に関しての誤解と問題が、それこそ「豊富」に示唆されています。
今回は、そんな誤解と偏見だらけの「政治学」について、「政治主義者」を自認する管理人が書き散らしました記事をまとめてみました。
入門篇・政治学原論
政治学の入門書おすすめ本5選【政治学科1年生、必見!】
政治学の一丁目一番地。初めて、政治学に触れる方向けの入門書のご紹介をしているのがこちらの記事です。
冒頭の丸山真男の著書もこちらで取り上げています。
宇野重規『民主主義とは何か』読後雑感~改めて「政治学」の王道を問う
現代の政治において重要な位置を占める「民主主義」(デモクラシー)に関して、コンパクトながら。要点を抑えた概説を示してくれる本の御紹介です。
また、併せて、近現代の政治学の問題点にも論及しています。
政治思想
政治学には、大別して、「政治哲学」(政治理論・政治思想)と「政治科学」(政策研究)の2つの系統があります。
後者が、現実の政治(現象)面の過程を研究・分析するのに対して、前者は、その基礎・背景として、そもそも「政治とは何ぞや」という原理論を扱います。
この章では、そんな政治哲学を主題とした記事を御紹介します。
保守主義とは何か?5分でわかる解説
「保守」という言葉が独り歩きしている感が否めない昨今。本当に「保守」の意味がわかっていますか?
舞台「ザ・オーディエンス」上映!~エリザベス女王と愉快で孤独な首相たち
君主制とは時代遅れの無用の長物なのか?
今を生きる立憲君主たるエリザベス英女王を主人公にした舞台をヒントに考えてみたいと思います。
「機動警察パトレイバー2 the Movie」の政治哲学的考察 (全三回)
日本の「戦後」とは一体何なのか?
この国に住むすべての人々に突き付けられているこの難問に挑んだ一人の映画監督がいます。
押井守。
これは彼と「戦後」と「政治」の物語。
この国では稀有な、「政治主義者」による「政治主義」のための「政治」映画です。
- 「機動警察パトレイバー2 the Movie」の政治哲学的考察 連載① ~押井守と「戦後」、前史としての『犬狼伝説』~
- 「機動警察パトレイバー2 the Movie」の政治哲学的考察 連載② ~「戦後」を終わらせる為の、たったひとつの冴えたやりかた~
- 「機動警察パトレイバー2 the Movie」の政治哲学的考察 連載③ ~「戦後」のその後~「日本」の退場あるいは解体としての「攻殻機動隊」「雷轟」

国家論・権力論
堀新『13歳からの天皇制』読後雑感~せめぎ合う二つの国家観~
現代の象徴天皇制を戦前と比較しつつ、丁寧に概説してくれる入門書のご紹介です。
併せて、「国家とは何ぞや?」という問題(国家観)をクローズアップします。
楾大樹『檻の中のライオン』読後雑感~2つの「政治」への恐怖心
「憲法て、そもそも何?」という疑問に答えてくれる憲法入門書のご紹介です。
併せて、人々が「政治」に対して抱く、恐怖心の2つの方向性について論じています。
ドラマ相棒:政治描写の違和感~右京さんの正義とは?~(シーズン7ネタバレあり)
ドラマからでも政治は学べます!
みんな大好き特命係の右京さん。でも、その右京さんの政治倫理観は、ナチスドイツと相通じるところがあるかもしれない!?
「スターシップ・トゥルーパーズ」~軍国主義よ、こんにちは
SF映画からでも政治は学べます!
凶悪な宇宙生物群との死闘を描いた痛快な映画に秘められた政治的メッセージとは?
映画「ブルークリスマス」~「政治」の本性を暴いた異色のSF邦画
政治権力の本性、その負の部分を描いた秀作です!
警察国家化?する日本
「地獄への道は、善意で舗装されている」?
物理的強制装置
物理的強制装置、または暴力装置とも言われますが、要するに、軍隊と警察です。
政治権力にとって切っても切れない関係である「軍事」に関しての記事を集めました。
軍事学の入門書,おすすめ本5選
「軍事=兵器」というイメージが流布していますが、そんな誤ったイメージを打破する、軍事初心者向け入門書を紹介する記事です。
押井守×宮崎駿「機動警察パトレイバー2 the Movie」対談~噛み合わない2人の「戦後」と「戦争」
二大軍事マニアの夢の誌上対決!
問題作「パトレイバー2」を出発点に、「時代」に向き合う姿を垣間見ることが出来ます。
軍事力という保険制度~軍事はゼロサムゲーム~
悲しいかな、兵器はウィンドウショッピングのようにはいかないし、スマホでポチれない。
米軍の対ゾンビ作戦計画~机上の空論は空論に非ず
備えよ、さすれば憂いなし!
シン・ゴジラの考察~怪獣映画の「政治」の描き方(全三回)
「ゴジラ(1984年版)」と「ガメラ2」という二つの特撮怪獣映画における「政治」の描かれ方を論じつつ、「シン・ゴジラ」が傑作たる所以を探ります。
- シン・ゴジラの考察~怪獣映画の「政治」の描き方~連載① 【「ゴジラ(1984年版)」の挫折】
- シン・ゴジラの考察~怪獣映画の「政治」の描き方~連載② 【「ガメラ2 レギオン襲来」の誤算】
- シン・ゴジラの考察~怪獣映画の「政治」の描き方~連載③最終回 【「シン・ゴジラ」、正しい「国難」の描き方】
アメリカの警察が知りたい(全二回)
一口に「警察」と言っても、その形態は、その国の政治文化・国家原理に大きく拠っていて、千差万別です。日米の警察制度を比較することで、国家原理・国家観も見えてくる。
国際政治篇
アメリカ大統領の核戦争の始め方:おすすめ映画「トータル・フィアーズ」(全二回)
史上最強の軍事大国アメリカ合衆国。
そのアメリカが保有する核兵器を使用する時、何が起こるのか?
その恐怖の過程を、ポリティカルスリラー「トータル・フィアーズ」を参考に概観していきます。
- アメリカ大統領の核戦争の始め方:おすすめ映画「トータル・フィアーズ」【前編】(エスカレーションとデスカレーション)
- アメリカ大統領の核戦争の始め方:おすすめ映画「トータル・フィアーズ」【後編】(核ボタンは存在しない?)
映画「スノーデン」(オリバー・ストーン監督)~恐るべし、アメリカ帝国~
「国際政治は、そんなに甘くない。」
日本人のナイーブな政治観をぶっ壊してくれる映画のご紹介です。
【脚注】
※1.丸山真男「政治学入門(第一版)」(丸山真男『政治の世界』岩波書店、2014年所収)。