軍事学の入門書,おすすめ5選

chess

軍事や戦争といったことを学ぼうとすると、その類書の多さに圧倒され、さて、どうしたものかと途方にくれます。

とかく、兵器に関する解説書の類は山のようにあります。

“軍事=兵器”というイメージが一般の方々にはあるようですが、ぶっちゃけ、これは完全な誤解です。

軍事学において、兵器学(兵器工学)は重要な一分野ですが、あくまで一分野です。

この誤解は、おそらくテレビゲームによるものかと推測しています(「ファ●コ●ウォーズ」とか「大●略」とか・・・)。

大体のテレビゲームの「戦争ゲーム」は、兵器の生産とその性能と数による敵軍との戦闘、殲滅がメインになっており(というかそれしかなく)、せいぜい、兵器の名前とスペックを覚える程度にしか役に立たない。

思想や主義に関係なく、「戦争」という現象が起こっている以上、それは学びの対象にならざるを得ません。

今回は独断と偏見で、初学者向けの本を5冊選んでみました。

松井茂『世界軍事学講座』

Roman Legion

おそらく、全く軍事に関して知識が無い方が、一番初めに読むのは、本書がいいのではないかと思います。

陸海空軍の特徴から、編成・階級の基本、各国の軍事思想など、軍事学の教科書として、一通り学べる内容になっています。

別宮暖朗『軍事学入門』

cavalry soldier

こちらも軍事学の入門書ですが、上記の『世界軍事学講座』よりは、専門的・歴史的記述が多くなっている感があって、特に第一次・第二次世界大戦から解説しています。

なので、松井茂『世界軍事学講座』の次に読むのをお勧めします。

麻生幾『宣戦布告』

prime minister's official residence

麻生幾は現役のジャーナリストです。

危機管理関係のノンフィクションを幾つか書いていて、著者初の小説にして、一躍有名にした本です。

あらすじは、原発の立地する福井県敦賀半島に、北朝鮮の潜水艦が座礁。

乗り込んでいた朝鮮人民軍偵察局の特殊部隊が山中に潜伏。

突然の非常事態に、大混乱に陥る官邸、警察、自衛隊。

法律の壁、憲法の壁、官僚のセクショナリズム、世論の動向、政局の迷走etc.

この本が凄いところは、徹底的に取材を重ね、今、「日本有事」が起こったら一体どうなるのか?を緻密にシミュレーションしているところです。

1998年の出版当時の国内政治をリアルに扱っており、当時の自社さ連立政権をモデルに、橋本龍太郎や土井たか子、梶山静六などが変名で登場しています。

この小説で驚かされるのは、その情報量の多さです。

発売当初、「誰が情報をもらしたのか?」と政府関係筋で囁かれたとかなんとか。

管理人的には、公安警察の実際の捜査(諜報・防諜活動)が白日に晒され、衝撃を受けたのを覚えています(公安の尾行て、こうやんのかよ!)。

1998年と、随分、時間がたち、有事法制など、大きく進展しているところもありますが、この国の「体質」は同じでしょう。

また、国家安全保障のダイナミズムを知るには打って付けの「教科書」だと思います。

なお、この小説『宣戦布告』と、かなり似た映画があります。

そう。同じ有事シミュレーションと言える映画「シン・ゴジラ」です。

なお、シン・ゴジラに関しては、こちらで扱っています。

(ガメラ2や1984年版ゴジラと比較しながら全3回の連載)

小室直樹『国民のための戦争と平和』

Omaha Beach

小室直樹をご存じでしょうか?

分かりやすくこの上ない故に、当ブログの記事でも登場し放しの感がありますが、今回の記事でも大活躍です。

20世紀前半を概観し、「平和主義」の欠点を指摘したり、「戦争」と「紛争」の違いを説明したり、いわゆる「小室節」で縦横無尽に語ります。

小室直樹/色摩力夫『国民のための戦争と平和の法』

Strategic Bomber B2

小室直樹からもう1冊。

こちらは、外交官だった色摩力夫との共著。

上記の『国民のための戦争と平和』が歴史的側面から解説することが多かったのに対し、法学的あるいは政治学的側面からの戦争へのアプローチが多いです。

この本の中で特にご紹介したいのは、「警察と軍隊の違い」の解説です。

ここは、政治学科の学生でも、あんまり分かっていないかも知れないでのすが、両者の本質的差異を、「国家の物理的強制装置(暴力装置)として、対外的に軍隊、対内的に警察。」だと、実は本質的差異の答えとしては片手落ちなんですね。

そこで登場するのが、ネガティブリストとポジティブリストという概念です。

詳しくはぜひ本書をお読みください。

また、軍隊と警察の中間に位置する「警察軍」に関しても言及されています。

戦時国際法や国連についても詳しく書かれています。

最後に

「戦争とは他の手段をもってする政治の継続である」

Pentagon

上記の言葉は、プロイセンの軍人、クラウゼヴィッツの有名な言葉です。

クラウゼヴィッツは、『戦争論』の中でこう述べています。

政治的意図が常に目的であり、戦争はその手段にすぎないからである、そして手段が目的なしにはとうてい考えられ得ないことは言うまでもない。


クラウゼヴィッツ『戦争論』(上)岩波文庫、2000年、58頁。

戦争は政治の手段であり、軍事が孤立して存在しているわけではありません。

日本人は、この事をあまり理解していないのではないかと、いつも感じます。

軍事なき政治も、政治なき軍事も共に現実を見ていません。

即ち、軍事学(戦争論、安全保障論等)は政治学の一分野ということです。

えーと、何が言いたいかというと、こっちの記事も読んでね!