哲学の入門書,おすすめ本6選

Athenian's School Hall

「哲学ってなんだろう?」
と、誰でも一度は思うことがあるんじゃないでしょうか?

そこで一念発起、書店の本棚で、『●分でわかる哲学』とか『●●の哲学が誰でもわかる』みたいな本を手に取り、ページを開けば、専門用語の解説だったりで、なにも面白くはない・・・。

はたまた、「よし!有名な人の本を買おう!」と、岩波文庫のコーナーに行って、カントやらヘーゲルを買ってみて、いざ、ページを開いてみると、専門用語の嵐と暗号のような独特の言い回しの大洪水で、そもそも何が言われているのかチンプンカンプン・・・。

そんな光景を山のように見てきた私が、哲学を学びたいアナタのために、哲学入門書のおススメをご紹介しちゃいます!

池田晶子『14歳からの哲学』

専門用語一切なし!

日常の言葉で語りかけてくる本書は、日本語の話者なら、14歳の中学生どころか、小学生でも読むことができます。

ところが、いや、だからこそ、誤魔化しが利かない。
専門用語で煙に巻くようなことはしない。学歴や権威、社会的地位を盾に逃げを打てない。

著者の池田晶子は、一切、誤魔化すことなく、一般の人々と同じ言葉で、「愛」や「心」「死」などといった根本的な疑問や問題の「問い」を立てていきます。

そう、「問い」を立てているだけです。

「答え」を書いているわけではないんです。

それは、この本を読んでいるあなたが考え抜くしかない。

おそらく半世紀後も読まれている本だと思います。


池田晶子『帰ってきたソクラテス』シリーズ

もうひとつ、池田晶子から。

抱腹絶倒、全方位喧嘩売りまくりな哲学書!

現代に蘇ったソクラテスが、現代の諸問題を有識者や市井の人々と、「ロゴス(論理)」を武器に対話しまくる!

インターネットやマルチメディアからシンドラーのリストや愛国心、学歴、性教育、差別まで。

こちらも専門用語一切なしの「哲学」実況中継!


↑「帰ってきたソクラテス」シリーズ全三冊はこちらに合本されています。

細谷功『具体と抽象』

私たちが生きている世界(現象)を、違った視点で捉えようとする試みが哲学とも言えます。日々、眼にしている世界(具象)の共通項を見つけたり、法則を発見したり・・・。

そんな考え方・方法論を論じたのが、本書『具体と抽象』です。

詳しくはこちらの記事にまとめてあります↓

藤沢令夫『世界観と哲学の基本問題』

著者の藤沢令夫は長年、京都大学で教鞭を取った日本の古代ギリシア哲学研究の第一人者。

本書では、古代ギリシアで議論された哲学や世界観を、平易に解説しており、それが、近現代までの思想に、どう影響しているか、まで語ってくれます。

難しいことをわかりやすく人に教える、というのは本当に難しいのですが、本書は見事にそれを実現してくれています。

「ヨーロッパ思想は、ギリシア哲学の変奏曲に過ぎない」という言葉があるほど、後世のあらゆる分野に影響を与えたギリシア哲学は、その出発点としても必須の知識でしょう。

プラトン『ソクラテスの弁明』

古典中の古典。

おそらく誰でも、書名だけは聞いたことがあるはずです。

“不当な罪を着せられたソクラテスが、民衆裁判所で自らの正当を主張し、最後、正義に殉じて死刑判決を受ける”

・・・まあ、よく聞くあらすじは、こんなところですか?

本当にそうかな?

ある意味、その後の歴史をガラリを変えてしまったともいえる「謎」多き人物です。

おそらく、注意深く読んでいくと、全然違う感想を持つかもしれません。

個人的には、あのソクラテスにやり込められた原告(告発者)の顔を想像してしまいます。

あんな論破されてどんな顔してたんだろう?
それも500人の前で・・・(ソクラテス裁判の裁判員=陪審員は市民500名 !)

小室直樹『日本人のための宗教原論』

最後に宗教学の入門書をひとつ。

え?哲学書の紹介だろうって?
そうなんですが、ぜひとも紹介したい。

宗教学は思想として哲学と重なる部分が大きいです。
ま、ニーチェは、「キリスト教はプラトン主義の俗流化」と言いますし・・・

あと、仏教については、こんなエピソードがあります。
阿刀田高が、敬虔なイスラム教徒に、ムスリムと異教徒との結婚に関して尋ねている際のやりとり。

「仏教徒は?」
「いけません。多神教だし・・・仏教は宗教じゃないのとちがいますか。あえて言えば哲学・・・。人間が考えたことです。イスラム教徒は神が直接伝えたことですから」

阿刀田高『コーランを知っていますか』新潮文庫、2006年、12頁。

ムスリムはムスリム同士の結婚というのが前提ですが、仏教はそもそも宗教ではないのではという指摘ですね。

確かに仏教が宗教というのは、かなり違和感があります(人が考えた、というのも違いますが・・・)。

今回の小室直樹の本でも、仏教の章は「仏教は近代科学の先駆けだった」っていうタイトルくらいですから。

『ミリンダ王の問い』や『豊饒の海』を取り上げたりして、あの意味不明な(笑)、「空」という概念に迫っていきます。


小室直樹は、こちらの記事でも取り上げまくっている推しメン(笑)なんですが、
とにかく、わかりやすい。


もう、この小室直樹読んでわからなければ、その分野は諦めたほうが宜しい!(て、具合にです。)

最後に ~王道を行け~

というわけで、独断と偏見で5冊、ご紹介しました。
(異論反論はありましょうがご勘弁を・・・)

哲学を勉強する基本は、奇をてらわず、王道を行くのが一番だと思っています。

今回は入門書のご紹介でしたが、今後、哲学書を読むなら、やはり古典を読んでおくことが肝要ではないかと。

ぶっちゃけ、毎年出る哲学書・思想書を追いかけますのは、本職でもない限り、無理だと思っています。
(時間とお金に余裕がある場合は別でしょうが・・・宝くじ当たんないかな・・・)