「ゾイド」(ZOIDS)ほどリバイバルを繰り返しているシリーズものも珍しいですね。
しかし、毎回、いつの間にか終息して、また消えて行ってしまう。
なぜ、こんなことになるか考えてみると、そこには、マーケティング的な問題、端的に言えば、ターゲット層を見誤っているのではないか、と思えてなりません。
この記事では、「ゾイド」のメディアミックス戦略として、ありえたかもしれない可能性を探っていきます。
「ゾイド」のターゲット層は誰なのか?~「ガンダム」との比較
80年代のゾイド発売当初から、その世界観の設定は、流動的で、作り込みがなされていない感がありました。
一応、最終的には、ゾイドは、ゾイド生命体(メカ生体)という形に落ち着いたようです。
他方、同じように、最初期の世界観の作り込みが流動的だった作品に、「機動戦士ガンダム」があります。
この両作品とも、玩具ありきと、アニメありきの違いはありますが、「戦争」「ロボットが主力兵器」と共通点があり、この両作を比較していくことで見えることもあるでしょう。
出発点は同じようなポジションの両作の、その後の進んだ道は大きく違いました。
ゾイドは、「メカ生命体」という設定を堅持しました。
対して、ガンダムは、機械(モビルスーツ)に生命体などの神秘的要素を全く取り入れず、あくまで、機械工学の粋を集めた兵器としての面を全面に打ち出します。
そして、神秘的な要素は、そのモビルスーツのパイロットの方に託したのです。いわゆる「ニュータイプ」という存在にです。
徹底的に兵器として描いたことによって、ガンダムにはひとつの方向性が現れます。
それは、あくまで、戦争の道具としての、モビルスーツを描くことで、戦争や政略、思想的対立(エレズムやジオニズム、ニュータイプ等)も描かれていくことになりました。
総括すると、ガンダムは、大人向けの戦争モノを志向することで、後々、子供の頃にガンプラなどから入ったファンが、成長すると、より深く広くガンダムの世界観を知り楽しむことが出来ます。
ガンダムが40年も人気なのは、後付けで、大人向けにミリタリー色や政治色を濃くしていった結果、上から下まで幅広い年齢層を獲得できる受け皿を形成できたのでしょう。
他方、ゾイドは、世界観の設定のリアリティの不足から、その製品自体の意匠が優れているものの、大人になった時の受け皿の部分に欠けたといえるでしょう。
ゾイドは、子ども向けの要素を捨てきれませんでした。
これは勝手な推測ですが、ガンプラとゾイドの購買層は、ある程度、被っているのではないか?
であるのに、現在における人気の母数に、ここまで差がでてしまう。
ゾイドバトルストーリーという架空戦記
しかしながら、80年代のゾイド第一期においては、ガンダムと同じような方向性の戦略も取られていました。
それが、今や伝説となったムック本「ゾイドバトルストーリー」。
ヘリック共和国とゼネバス帝国の間の壮大な兄弟喧嘩中央大陸戦争を描いていて、とてもいい味を出していますした。
この時の演出は、完全に第二次世界大戦を意識した世界観で、第二次大戦ヨーロッパ戦線のオマージュをこれでもかと詰め込んだストーリー展開でした。
メインとなる戦闘シーンは、ゾイドの実物を使った戦場写真風。
あらすじも、完全に近代戦記のそれです。
両軍の兵士には、タミヤのMMシリーズを使ってましたね(共和国兵が連合軍、帝国兵がドイツ軍でした)。

ここでは、その内容を振り返ってみましょう。
『ゾイドバトルストーリー』1987年刊
ZAC(ゾイド歴)2030~2038年。
共和国のゴジュラス一強に対して、帝国が、そのライバルともいうべき、アイアンコングやサーベルタイガーをロールアウトします。
また、共和国の旗艦ともいうべきウルトラザウルスの開発と、その帝国軍特殊工作員による奪取事件の顛末が描かます。
戦場写真は迫力ありますが、まだ、ミリタリーに振り切れていない感がある第1巻でした。

『ゾイドバトルストーリー②』1987年刊
ZAC2039~2044年。
ウルトラザウルスを先頭に立てた共和国軍の快進撃で、遂に、帝国首都は陥落。共和国が中央大陸全土を手に入れますが、皇帝ゼネバスの逃亡を許してしまいます・・・。
そして1年後、ゼネバスは、亡命先の暗黒大陸から新型ゾイドを装備した強力な軍団を率いて旧帝国に凱旋、失地回復します。
そして、帝国は、最終兵器ともいえるデスザウラーを実戦投入し、形勢逆転、今度は、共和国首都に迫ります!
本巻になると、俄然ミリタリー色が強まります。
本作では、共和国軍ヨハン・エリクソン大佐と、帝国軍の若き大尉トビー・ダンカンの因縁が主軸となってストーリーが展開します。
身を挺してゼネバスを脱出させた「北海の虎」ことダニー・ダンガン将軍の弟がトビーで、そのダンガン将軍のサーベルタイガーを撃破したのがエリクソン大佐のウルトラザウルスという、この怨讐が、物語の鍵となる。
他にも、共和国の重要拠点アルメーヘンの橋を巡る帝国軍空挺部隊の話は、完全に第二次大戦の「史上最大の空挺作戦」マーケットガーデン作戦です(アルヘーメンて、アルンヘム!)
もう第二次世界大戦のオマージュがぎっしりです。

『ゾイドバトルストーリー③』1988年刊
ZAC2044~2046年。
領土の大半(平原地帯)を占領された共和国軍は、山間部のゲリラ戦やシーレーン防衛(海戦)で対抗し続けます。また、被占領地となった共和国住民のレジスタンスが描かれます。
この辺りも、第二次大戦のドイツ軍占領下のヨーロッパ諸国でのレジスタンス活動が念頭にある感です。
そして、正攻法では如何ともし難い最強の敵デスザウラーに対して、あの手この手で戦いを挑みます。
また、本作ではヘリック大統領誘拐を画策する帝国軍特殊コマンドウと共和国陸軍大統領親衛隊の女性士官の戦いも描かれます。
この誘拐作戦なんか、ジャックヒギンズの傑作『鷲は舞い降りた』のオマージュではないかと思います。これは、ドイツ軍コマンド部隊によるチャーチル英首相誘拐作戦の顛末を描いた戦争冒険小説です。
にしても、共和国軍起死回生の「ゲルマンジー上陸作戦」て、ノルマンディー上陸作戦そのまんまですね。

『ゾイドバトルストーリー④』1988年刊
ZAC2047~2048年。
共和国は、デスザウラーを打倒すべく、ウルトラザウルスの開発者ハーバート・リー・チェスター教授を帝国軍捕虜収容所から救出し、新型ゾイド開発を推し進めます。
一方、帝国軍の技術士官、マイケル・ホバート少佐も、教授にライバル心を燃やし、新型ゾイド開発に邁進します。
本作は、対デスザウラー用決戦兵器の開発とその妨害作戦、対する欺瞞工作が延々と描かれます。
一番のお気に入りのエピソードは、にわか将軍の二人が企てた「かまどとツバメ」作戦の顛末を描いた「すべていつわりの島」です。

以上、四作をご紹介しました。
これが、本当に読ませる架空戦記に仕上がっています。
実は、この続刊に『新ゾイドバトルストーリー』もあるんですが、ゾイドのデザインがが一新されたことや、「暗黒大陸」「暗黒軍」という新たな設定が仇となり、前4巻までのミリタリーに寄った作風に水を差す結果になってしまっているようです。

旧『ゾイドバトルストーリー』が優れていたのは、ゾイドを単なる人気メカとして並べるのではなく、国家が運用する兵器として描いた点にあります。
また、それを際立たせるため、戦略、兵站、新兵器開発、占領地での抵抗運動、特殊作戦まで盛り込み、中央大陸戦争をひとつの戦争史として成立させていました。
「アナザーゾイド」という可能性(架空戦記ゾイド)
ゾイドの展開戦略に迷走がみられた一方で、ガンダムは着実にメディアミックスを展開させていきます。初代ガンダムの世界線(宇宙世紀)のアナザーストーリー・サイドストーリーを、次々と打ち出します。
更には、「オルタナティブ」的な展開で、宇宙世紀とは別の歴史軸(世界線)に、モビルスーツを登場させるという荒業も繰り出します。いわゆる、「アナザーガンダム」という作品群です(ガンダムX、ガンダムW、ガンダムSEED 等々)。
もし、ゾイドが、新しい路線を、メディアミックス戦略を採用して、購買層を拡大しようとするなら、このアナザーガンダムのような方式が有効ではないでしょうか?
つまり、ゾイド新展開としての「アナザーゾイド」です。
星間戦争(ゾイド侵攻)
ゾイドを擁した異星の軍隊による地球侵略です。
文字通りの星間戦争です。
地球側は現用兵器で迎え撃つことになります。
パッと思いつくストーリーは、帝国軍の地球侵攻と、応戦する地球側(国連軍)。そして、地球側に立って参戦する共和国軍という構図ですかね(単純すぎる?)
レドラーとF-15イーグルの空中戦とか見たくありませんか?

まあ、しかし、東京を蹂躙するデスザウラーとか、完全にゴジラですね。
ゾイドが主力兵器となった20世紀
現代の兵器としてゾイドを使うのはどうでしょう。
米ソの第三次世界大戦で、両軍の兵器がゾイドとか。
ゾイドの運用方法は、近代兵器と大体対応している気がします。一例を挙げると・・・
| ゾイド(共和国/帝国) | 兵器の種類 |
| カノントータス/― | 自走砲 |
| ダブルソーダ―/サイカーチス | 攻撃ヘリ |
| サラマンダー/― | 戦略爆撃機 |
| バリゲーター/シーパンツァー | 水陸両用戦闘車 |
| ゴドス/イグアン、ハンマーロック | 軽戦車 |
| ディバイソン/レッドホーン | 重戦車 |
| レイノス、プテラス/レドラー、シュトルヒ | 戦闘機 |
| ウルトラザウルス/― | 航空母艦・戦艦 |
こうして並べてみると、ゾイドは単なる動物型ロボットではなく、陸海空の近代的な兵器体系と、上手く対応しているようです。
なお、全体のゾイドの装備を見ていると、陸だと両軍拮抗していますが、海空両軍は、やっぱりウルトラザウルスとサラマンダーがいるので、陸軍国たるソ連は帝国(赤いし)、海軍国たる米国は共和国ですかね(共和政だし)。
レッドホーンやモルガが大群で北ドイツ平原を突進する様子を見てみたくないですか?
レッドホーンやレドラーなんて真っ赤でソ連赤軍にピッタリです。
モスクワの赤の広場で軍事パレードするアイアンコングやレッドホーンが見てみたい!
迎え撃つゴジュラスやゴドスなどの米陸軍機械化師団!
サラマンダーの大編隊で都市を戦略爆撃!とか見てみたいです。
ウルトラザウルスはさしずめ、米海軍の空母扱いですかね。ウルトラザウルス級「ニミッツ」とか「カールビンソン」。おそらくウルトラザウルスの設定は、かなり巨大化しないと「空母」になりませんが・・・(甲板にプテラスやレイノスをズラーと並ばせないと)。

自衛隊とかどうでしょう?
なんか小型中型ゾイドに大半占められていそうですね。
ゴドスとかガイサックとかスネークスとかで、北海道に侵攻してくるソ連極東軍のブラックライモスやらイグアンと交戦してそう。
で、第7師団や富士教導団にだけ、虎の子のゴジュラスやディバイソンが配備されている感じですかね。
余談ですが、この現用兵器を全く別の兵器体系に置き換えて、現代史を再構築するという架空戦記は、もう存在しています。
恋愛ゲームの皮を被ったミリタリーSF「マブラヴ」シリーズです。
この世界では、20世紀に火星で接触した異星体「BETA」による地球侵攻がストーリーの基軸にあります。侵攻を受けた各国軍は、戦術人型兵器を主力兵器として交戦しますが、その型式は、史実の軍用機のものです(F4、F22、スホイ27など)。
これは、BETAが、地球侵攻(初降着)当初、航空戦力で圧倒してくる中国軍に対して、ビームレーザー兵器をもった種を投入したことで(光線級)、人類側が、航空戦力の投入が全くできなくなってしまった為に起きたことです。
あらためて、「ゾイド」はどこで道を誤ったか?
いかがだったでしょうか、ゾイドとガンダムを、やや強引に比較して、お話ししてきました。
ゾイドが戦略として道を誤ったのは、「メカ生命体」という設定を採用したことではない気がします。
子ども向けであること自体も玩具メーカーの戦略として、誤りとは言えません。
ただ、ガンダムのように、最初にガンプラやゾイドで遊び始めた少年たちが、やがて、青年、壮年、中年と年齢を重ね、モノを見る眼も肥え、教養も身につけていくのは必然です。
その時に、彼らの鑑賞眼に耐えうるような、 兵器・戦争・国家という魅力を、成長したユーザーが掘り下げられる形で、うまく育てられなかったことが問題だったのではないでしょうか。
ゾイドが失った可能性とは、子ども向け玩具としての魅力ではありません。子どもが大人になった後も、なお遊び続け、考え続けられる世界だったのではないでしょうか。




