哲学をやっていると(実は、この言い方自体がかなり嫌なのだが・・・)、かなりの確率で言われることがあります。(面と向かってでも、そうじゃなくても)
それは、「哲学は、簡単なことを難しく考えている」という趣旨の感想というか、ご批判です。
これ、もう耳にたこができる位、言われたり、見かけたりするので、もはや反論する気も起きなくなってしまいました。
しかし、これではいかんと!と一念発起。
で、ご紹介したいのがこちらの本です。
細谷功『具体と抽象~世界が変わって見える知性のしくみ』dZERO、2014年初版
2つの「哲学」
「哲学」とは何か?と問われますと、広義と狭義で二通りの答えがあるでしょう。
広義には、その発祥たる古代ギリシアでの原義「フィロソフィア」(知を愛する)から、知的営為や学問し全てを意味する。との説明。
狭義には、形而上を問題とする形而上学として。
前者はともかく、この後者が曲者で、「形而上」ってなんやねん?となるわけです。
多くの人の「哲学わからん」もこの後者のことを言っているのでしょう。
(なので、以下この形而上学としての哲学に絞ります)
形而上があるからには、形而下があるわけで、この辺りまで来ると、皆さん顔をしかめ始めます・・・
ですが、今回ご紹介するこの本は、この一見小難しい課題を、とてもわかりやすく解説してくれちゃいます!
本書で言う、具体と抽象とは、即ち形而下と形而上です。
なんのこっちゃ、と思われるかもしれませんが、本書を読めば、それがわかります!
結局、狭義の「哲学」(形而上学)とはなんじゃらほい?の答えは・・・
本書を読め!に尽きるんです。
なぜなら、本書で言う、「抽象化」の極北がいわば「哲学(形而上学)」のことだからです。
徹底的に抽象度を高めた学問の代表が数学と哲学です。ざっくり言ってしまえば、抽象化の対象を論理の世界だけで説明するもの、つまり純粋に理論的なものが数学です。対象が人間の思考や感情など、理論や論理だけでは説明がつかないものが哲学ということになるでしょう。
細谷功『具体と抽象』dZERO、2019年、43頁。
いつも哲学を説明するときに、「哲学は言葉で行う数学」だと説明しています。
数学のような答えを言葉でやろうとしているんです。(かなり無茶なのは百も承知)
その苦闘、四苦八苦してきた歴史が哲学史と言えるかもしれません。
再び、「哲学は簡単なことを難しく考えているのか?」
「具体と抽象」をここで説明し出せば、本書を丸写ししてしまうことになってしまう(!)ので、とにかく読んでほしいのですが、最初のお題「哲学は簡単なことを難しく考えているのか?」ということに関して言えば、ぶっちゃけ真逆です。
だって、世界は具象(具体的現象)に溢れている訳ですから、それをモデルに当てはめ、解明・説明・カテゴライズしていかないと霊長としてはやっていけなくないですか?
つまり思考の上で「簡単」「単純」にしているんです。
全然逆でしょ。
具体レベルの個別事象を、一つ一つバラバラに見ていては無限の時間がかかるばかりか、一切の応用が利きません。
本書、33頁
本書を読んだ後で・・・
しかし、一つ注意したいのが、本書は、抽象化という、いわば「哲学方法論」に関して説明している訳であり、哲学そのもの、それこそ具体的な「哲学する」ことを行っている本ではありません。
本書を読破した方は、是非、以下の記事で紹介している「哲学入門書」にチャレンジしてください!