警察小説やドラマを10倍楽しむための,警察を学ぶ入門書おすすめ本5選

MPD

皆さん、警察小説や刑事ドラマは好きですか?

最近だと、鑑識や科捜研なんかが主人公だったり、昔に比べると警察組織の様々な範囲(部署=専務)に光が当てられています。

多分、大きなターニングポイントとなったのが「踊る大捜査線」。

ここから一気にリアル路線に舵が切られた。

それまでの荒唐無稽というか、ハリウッド的世界観の警察物は大分鳴りを潜めましたね。(「警察官職務執行法」や「拳銃使用及び取り扱い規範」なんか、お構いなしに、撃つわ撃つわ、殴るわ、蹴るわ・・・)

しかしながら、ホンモノの警察は小説やドラマとはやっぱり違う。

今回は、警察の実態を知りたい方向けの入門書をご紹介します。

読むと、警察モノがもっと楽しく観れること間違いなし!

(特に、刑事ドラマじゃなくて、警察24時系が)

古野まほろ『警察手帳』新潮新書

今、一から警察を勉強しようと思ったら、本書が最良の選択です。

著書はメフィスト賞受賞の作家。

しかし、作家業の前職は、東大卒のキャリア警察官(警察庁第1種警察官)、つまり警察官僚です!

作家かつ元警察官僚の書いたこの異色の警察本。

ちょっと他の警察解説書の追随を許さないところがあります。

警察官への道、警察文化というお話から、警察官のキャリアプラン、キャリアとノンキャリアの関係の実像、日本警察の成り立ち、警察本部と警察署の役割と関係、警察庁の役割、公安委員会、都道府県警察同士の関係etc.

とにかく縦横無尽に語りつくす!

そして、作家さんだけあって読み易いし面白い。

それに元警察官僚故に、リアルかつ詳細で、警察行政全体を俯瞰している感があります。

ジャーナリストの書いた警察入門書だと、表面的過ぎたりするんですが、本書はかなり突っ込んでいます。

例えば、都道府県公安員会と警察本部の関係。

類書では、はんこ押し、お飾り、などと揶揄されますが、著者はこれを明確に否定します。これだけでも一読の価値があります。

惜しむらくは、新書であること。

もっともっと読みたい!もっと書いてほしい!

(著者も、あとがきで曰く、本書は著者稿の2~3割だと・・・)

本書のあと、著者は警察関連の新書を幾つか出版していますが、事実上続編ですかね。

あと、比喩が、軍事組織(師団や艦艇)の時があるので、そこら辺の教養が無いと読み難い箇所があるかもしれません。

それはさておき、本書を読めば、日本警察の概略は、ほぼ把握できてしまいます。

従って、以下では、各専務(専門部署)を知ることのできる本を見ていきましょう。

【追記】2023年3/12

待望の「公安警察」篇が出ました→関連記事:古野まほろ『公安警察』~「警備公安警察」入門書の新たなスタンダード

毛利文彦『警視庁捜査一課殺人班』角川文庫

刑事ドラマの花形といったら、「警視庁捜査一課」。

もう2時間ドラマでの定番で、誰でも知っている警察の部署ですね。

本書は、その警視庁捜査一課(警視庁刑事部捜査第一課)、特に、その中でも「殺人犯捜査係」(1995年までは「強行犯捜査係」)の実際の捜査活動を取材したノンフィクションです。

皆さん、捜査一課のイメージってどんな感じですか?

7~10人くらいの刑事が、詰めてる感じ?

そんな描写のドラマも見かけますね。

でも、実際は、捜査一課は総勢300人超える大所帯。

警視庁本庁舎6階に陣取ります

その中で、殺人班は殺人犯捜査第1係から第14係まで存在する。

本書では、そんな殺人班の捜査を、いくつかの実際の殺人事件を取材して描いています。

そこには、「本当の」刑事ドラマがりあます。

毛利文彦『警視庁捜査一課特殊班』角川文庫

上記と同じ著者からもう1冊。

こちらは、同じ警視庁捜査一課でも、「特殊犯捜査係」を扱かったノンフィクション。

通称の「SIT(シット)」と言った方がなじみ深いかもしれませんね。

最近はこの名称で、ドラマや映画に引っ張りだこですから。

警備部の特殊部隊「SAT」とよく対で紹介されます。

SITは、ハイジャック、誘拐立てこもり、企業恐喝の捜査を担当し、対テロ特殊部隊のSATと分掌が重なる部分があります。

本書でも、函館空港全日空機ハイジャック事件(1995年)での対応を追うことで、SATとSITを比較しています。

凶悪犯(誘拐犯や人質立てこもり)との戦いは、現実だけあって緊張感があり、読み応えがあります。

相良総一・北芝健『刑事捜査バイブル』双葉社

実際の刑事の捜査の流れを丹念に追ってくれるのが本書です。

110番通報から、地域警察官の臨場、現場保存に始まり、検視、捜査本部の設置、聞き込み、出張、鑑識、尾行、逮捕、取り調べや供述調書まで、一通りの「刑事事件」の動きと、手続きが示されています。

刑事ものを見るなり書くなりする時に重宝する一冊だと思います。

青木理『日本の公安警察』講談社現代新書

よく「刑事警察vs公安警察」みたいなタイトルが踊りますが、はい、みんな大好き「公安警察」のご紹介です。

なんか困ったら「公安の陰謀だ」みたいに安易に描かれているきらいがありますよね。

そんな公安警察を知るための、もはやバイブルみたいな感があるのが本書です。

確かに、公安を知りたければ、まずこの本ですね。

著者は元共同通信社の警備公安担当記者。

最近だと、よくテレビにコメンテーターとして出演されていますね。

特高警察の解体から、現在の公安警察の成立までを辿りますし、公安内部の組織や公安の捜査手法も概説。有名な「サクラ」(現在は「ゼロ」?)の活動に関して詳しいです。

そんな本書の中には、革マル派が、デジタル警察無線を傍受していた事件(警察にとっては痛恨の出来事)についても詳しく書かれており、著者の取材力を窺い知ることができます。

ちなみに、警察庁の「ゼロ」(現在もこの名称が使われているかは不明)に関しては、毎度お馴染み、麻生幾のこちらの小説をどうぞ。

最後に

如何だったでしょうか?

各専務を紹介と言いながら、ほとんど、「刑事」に偏ってしまい、「警備公安」に関しては、1冊(警備のもう一方の雄たる機動隊は詳述なし)。

「生活安全(生安)」「交通」に関しては皆無の体たらく・・・。

それだけ警察ワールドは広い!とご容赦ください。

あ、ちなみに、警察を実際に見学することもできますよ!

首都圏にお住まいの方、お越しになる方は是非!