首都東京で「何か」が起きた時、日本政府はどうするのでしょうか?
非常事態の鉄則は、国家がその指揮統制機能を失わないことです。
もし、それが失われてしまったら、元も子もありません。助けられる命も助けられない。
故に、政府自体が安全なところに退避する必要があります。
そんな事態を想定して、整備された基地が、実は日本にもあります。
それが、立川市にある「立川広域防災基地」です。
「基地」?
「基地」といっても、実際は様々な複合施設の集合体です。
主だったものをざっと挙げていきますと・・・
- 内閣府(政府災害対策本部予備施設)
- 東京消防庁立川消防合同庁舎
- 東京消防庁航空隊
- 警視庁多摩総合庁舎(第八方面本部)
- 警視庁第四機動隊庁舎
- 警視庁航空隊
- 東京都立川地域防災センター
- 東京都多摩広域防災倉庫
- 国立病院機構災害医療センター
- 日本赤十字社関連施設
- 陸上自衛隊立川駐屯地(主にヘリコプター運用)
- 海上保安庁(海上保安試験研究センター)
ここは、在日米軍の立川基地跡地を利用した広大な土地に建設されました。立川広域防災基地のお隣は広大な国営昭和記念公園。ここも立川基地跡です。
米軍基地跡地は広大な為、いざ返還されると、都市計画のやり甲斐がありますね(シムシティ的な意味で)。
自治大学校、立川市役所、立川拘置所、立川警察署なども所在してており、いわば一大官庁街、霞が関・永田町に対しての「西の官庁街」といった趣です。
「西の官庁街」といっても、霞が関・永田町のように、警察官があちらこちらに立番しているような、物々しさはなく、むしろ閑散としています(大丈夫かいな)






ちなみに、同じような基地返還地だと、埼玉県の所沢基地が返還され、跡地が同じように官公庁・公共施設に整備されています(但し、米軍所沢通信所は存続)。
所沢では、国の施設としては、東京航空交通管制部(東京コントロール)や防衛医科大学校などが建設されました。公園も所沢航空公園が整備されています。
「立川もゴジラから30キロしか離れていないが、大丈夫か?」
その手のことに詳しい人以外に、全く無名だったこの施設を一躍有名にしたのが、映画「シン・ゴジラ」でした。
物語中盤で、永田町・霞が関がゴジラによって壊滅し、主要な閣僚も死亡する中、日本政府は立川広域防災基地に退避し、政府災害対策本部予備施設に官邸機能が移管されます。

そんな中、主人公らのこんな会話が交わされます。
「しかし、立川もゴジラから30キロしか離れていないが、大丈夫か?」
「ここがやられた時の政治的空白の心配なら無用だ。次のリーダーがすぐに決まるのが、この国の長所だという事がよく分かった。」
映画「シン・ゴジラ」より
うん、全然大丈夫じゃないね。
東京都心が首都機能を喪失するような事態ならば、立川が無傷である保証はありません。
三多摩地域が都心部と同程度に「被災」した場合、どうするのか。
災害救援の拠点、前線基地としてはいいのですが、政府の指揮代替施設としてはどうなのでしょうか?
加えて、ここは、有事・非常事態を想定して整備されていますが、その有事は、大災害であって、戦時ではありません。
戦時の代替指揮施設を考えるなら、立川では不十分になります。
自然災害と違って、戦時は、敵意と持った「敵」がいる訳ですから、敵はこちらの指揮機能を奪おうとします。
その場合、立川広域防災基地には、ほとんど防御機能がありません。
地下に広がっている訳ではありませんから。
例えば、米国の場合、ホワイトハウスの地下の「大統領危機管理センター」がありますが、核戦争のような極限状態には、米政府首脳部は、ワシントンD.C.を脱出し、国内各地の施設に退避します。それは軍事施設であり、多くが地下化された、いわば「要塞」です。
これがいわゆる「政府存続計画」です。
冷戦時代の主だった指揮代替施設でも・・・
- 「レイヴンロック(サイトR/予備国家軍事指揮センター)」(ペンシルバニア州)
- 「北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)」(コロラド州シャイアン山)
- 「オル二―(連邦予備警戒センター)」(メリーランド州)
- 「キャスパー(戦時連邦議会)」(ウエストバージニア州)
これに加えて、地上の固定基地にいては、どちらにしろ危ないと、空に逃げる手段(E4国家緊急空中指揮機)もあります。
(ちなみに、地上を走り回る(!)という巨大司令部トレーラーの計画は破棄されましたが・・・。)
ここまで至れり尽くせりにする必要はないでしょうが、日本政府も、関東地方以外にも、広域防災基地、それも軍事的脅威も勘案したものを建設した方が無難でしょう。