すっかり投稿が遅くなってしまいましたが、1月某日、2023年になって初の神保町遠征です。
更地になってる!
地下鉄の神保町駅の階段を上がり、今は亡き神保町ホールに思いを馳せていると、その隣、旧スーパー冨士屋の建物が解体され、更地に。救世軍本営が向こうに見えますね。

靖国通りを歩いていくと、今回は、セール開催の店舗が見受けられましたね。

神田古本祭り(秋)ではよく見かける光景です。大体、20%オフ。
セールに当たると嬉しいものです。
ところが、次の瞬間・・・
まさかの・・・
まさかの半額セール開催です。それも田村書店。
田村書店といえば、神保町の古書店街でも老舗中の老舗のひとつ。
ズラーと天井まで積み上げられた全集の山。
黄色い短冊には、月給が軽く吹っ飛ぶ価格が書き込まれています。
そんな田村書店がまさかの半額セールです。
それもほぼ1月いっぱい。
そして驚くなかれ、値引き額は50%オフ(!)
私が訪れたのは、もう1月半ばを過ぎていたのですが、ポスターには「30%」と印刷されていました、それが斜線を引かれ、「50%」OFFにまでなっていました。

いやいや、これは只事ではない。
いざ、店内へ。
すると、どうでしょう。
あれほど店内を埋め尽くしていた貴重な古書籍は、その大半が消え、棚はスカスカの状態・・・。
まさか閉店・・・
おそらく、セール開始当初は、それこそ激闘が繰り広げられたであろうことは容易に察しがつきます。
しかし、この半額セール。
すぐに、かつての巌松堂書店の事を思い出さずにはいられませんでした。
巌松堂は田村書店と同じく、靖国通り沿いに店を構えた老舗古書店ですが、2010年に惜しむらくも閉店してしまいました。
その際は、閉店セールとして、やはり単品300円均一、揃いモノ半額という、いわば「投げ売り」セールが行われたのです。
まさか、その再現か・・・。
田村書店は、2022年から、営業日が金土日の週3日まで縮小していましたから、やはりという感が・・・
閉店ではない?
しかし、どうも伝え聞くところによると、閉店ではないようで、とりあえずは一安心。
しかしながら、神保町に似つかわしくない「大特価セール」には、心穏やかならざるものが・・・。
確かに、本好きとしては、喉から手が出るほど欲しかった本が、半額で手に入るのは、この上ない僥倖。皆さんホクホク顔。
しかし、本当にそうでしょうか?
我々本好きの頭を悩まし続けた「ブックオフ問題」が、頭の片隅を過ぎりませんか?
価値は価値として
ブックオフがその本の価値を無視して、状態だけで査定・買取し、売り場に放出するという画期的な手法を目にした時、多くの読書人は卒倒しそうになりました。
アリストテレス全集も吉本隆明もエロ漫画も芸能界暴露本も、全部一緒くた。高級も低級も何もありません。
あの違和感。
本の価値そのものを考慮しないことへの反知性主義の匂い。それへの反発・義憤。
かたや、神保町は本の「価値」を愚直に守ってきました。
読書人にとって、神保町の古書店街が、貴重な古書籍に高額な値をつけていることは、ひとつの安心感を与えてくれます。
「ああ、この街は価値を知っている街だ」と。
その抵抗線が崩れていく音が、「セール」には含まれていませんか?悲鳴と言ってもいい。
極端すぎるセールは、そんな感を抱きます。
神保町の世界観に似つかわしくない「セール」が、今回の、一時のことであることを願わずにはいられません。