師団祭に行こう!(陸上自衛隊練馬駐屯創設記念日/第1師団創立記念日)~東京23区唯一の大規模イベント(2023年)

全国の自衛隊施設では、様々な一般公開行事が行われています。

しかし、東京に住んでいると、なかなかそんな機会も無いように思われるでしょう。

しかしながら、東京23区にも自衛隊の施設はあります。

中でも、練馬区にある陸上自衛隊練馬駐屯地では、一般公開される師団祭が毎年開催されています。

練馬駐屯地とは?師団とは?

陸上自衛隊では「基地」ではなく「駐屯地」と呼びます。練馬駐屯地は、練馬区と板橋区の区境付近にあり、環状七号線が真横を走り、東武東上線東武練馬駅から徒歩で行ける立地にあります。

押井守監督の神映画「パトレイバー2」で、警視庁に警戒出動(包囲)されていた駐屯地です。

故に、23区住まいの方や、埼玉南部の方も気軽に来場することが出来ます。

この練馬駐屯地に司令部を置くのが第1師団です。

第1師団は、人員約6000名を擁し、南関東(首都圏)を管轄範囲にしている部隊です。

練馬駐屯地には、その師団司令部をはじめ、隷下の各部隊、特に第1普通科連隊(1普連)が駐屯しています。

陸上自衛隊練馬駐屯地・第一師団司令部
↑練馬駐屯地正門(正面の庁舎は第1師団司令部)

1普連は、いまや23区内駐屯の唯一の普通科(歩兵)連隊ですので、首都直下地震や都心部でのテロなど、緊急事態には真っ先に出動する重要な部隊です。

(かつては、市ヶ谷に32普連が存在していましたが、大宮に移駐してしまいました)

セキュリティチェックは大行列

そんな普段は入れない駐屯地に入れちゃう訳で、開場の午前9時には、営門前には長蛇の列。軽く100人は超えています。

誰でも入れるのですが、勿論そこは軍事施設。セキュリティチャックがある訳で、行列は牛歩状態です。

こちらの有難いことは、車での来場は禁止ですが、自転車はOKなんですね(年度で違う?)。なので、周辺住民の自転車来場も多数です。

駐屯地内はワンダーランド

駐屯地内はまさにお祭りです。

各種出店が軒を連ねます(からあげ、かき氷、やきそば、串焼きetc.)

しかし、ここは自衛隊。

他の祭りと違うのは、各種の自衛隊車両・装備が展示され、体験できたりすること。

陸上自衛隊野外入浴セット
↑「野外入浴セット」で足湯体験(第1後方支援連隊)
81式短距離地対空誘導弾
↑81式短距離地対空誘導弾(第1高射特科大隊)

来場者は、大きく3つに分かれます。

まずは、自衛隊員の家族・知人・友人。

そこかしこで、「いつも主人がお世話になっております」と挨拶を交わす光景が見受けられます。

次に、明らかに自衛隊ファンな人達。カメラ小僧おじさんも多数出没しています。

最後に、地元住民などの一般客。

これが混在して、駐屯地内は、祭りの熱気に満ちています。

なぜか、メイン開場のグラウンド方面のスピーカーからは安倍晋三元首相の演説が流され続けており(現役首相でないのがご愛嬌)、カオスな状態に拍車を掛けています。

迫力のミニSLと自衛隊車両試乗

子ども向けのイベントとして、ミニSLが走っていました。

このSL。いわゆる、SLの形をした電気モーターの電車ではなく、本当に釜に石炭をくべて走る文字通りのSLです。

円形の線路に、2編成が走っていたので、それほど待たずに乗れました。

ミニ機関車

一方、全然乗れないのが、自衛隊車両(トラックと軽装甲機動車)への試乗です(こちらは大人も乗れます)。

朝から整理券を配るのですが、午前中、というか、開場まもなく長蛇の列になり、あっというまに配布分が終了してしまいます。

自衛隊車両乗車券
↑整理券と乗車記念カード
自衛隊トラック
軽装甲機動車
↑軽装甲車に載って一周

師団長訓示はカルチャーショック

師団祭のメインプログラムは、中央のグラウンドで執り行われる記念式典(観閲式)です。

師団長や来賓祝辞(東京都知事)、部隊の紹介や模擬戦の展示などがおこなわれます。

観閲者(師団長)が車両で入場する際に、「これを阻止せんとする集団」との間に模擬戦(銃撃戦)が始まったのには、驚きましたね。

師団長訓示では、ちょうど、この師団祭(4/9)の3日前の4/6に発生した宮古島でのヘリ墜落による、第8師団司令部の遭難に触れていました。

行方不明の第8師団長は、本日訓示の第1師団長と同格の陸将(中将に相当)です。行方不明の幕僚には防衛大時代の後輩もいらっしゃるそうで、一時は師団祭の中止も考えたほどだそうです。

(実際、第8師団では、4/16の第8師団祭は中止になりました)

また、訓示では、「第1師団の敗北は主権の喪失」であると強調されていました(昨年の訓示でも述べられて話題になりました)

「主権」とは、フランスの思想家ジャン・ボダンが理論化した概念で、「一定の領域において、恒久的、絶対的かつ不可分・不可侵な最高の権力」を意味します。

首都を失陥するということは、政府の統治が崩壊することであり、まさに主権を喪失することを意味します。近代国家は主権国家であるので、それは日本国の実質的消滅でしょう。

(首都を失っても戦時遷都したり亡命したりと、道はあるのですが・・・)

ともかく、首都防衛の重責を強調するものでした。

来賓には、小池百合子東京都知事もいらっしゃいます。

部隊を観閲(巡閲)するのに、82式指揮通信車に搭乗するのですが、装甲車上の小池知事というのは、なかなかレアな光景です。

(そういえば、元防衛大臣でしたね)

観閲
↑1両目が師団長、2両目が都知事

愛国心の問題にも触れていましたね。

国際世論調査で、「有事の際に戦うか?」という問いで、日本が最下位であった点などで、

戦後教育の問題の指摘もされてました。

自衛隊のイベントなので、左派といいますか、リベラルな方は余り来場しないと思いますので、自衛隊側にとっては、いわば「身内」の方ばかりでしょうから、先程の安倍元首相の演説も然り、かなり政治的に踏み込んだ発言が見られます。

時節柄、ロシアによるウクライナ侵攻を意識した発言や趣向も多く、式典終盤には、ウクライナ出身の若手評論家のスピーチもあったくらいです。

ノンポリというか、中間的な方には、軽くカルチャーショックかも知れませんね。

一応、中立的といいますか、橋渡し的な事を言えば、軍隊と民主主義は、それほど相性が悪いとは言えない。

デモクラシー発祥の地、古代ギリシア(アテナイ)では、軍人の義務を果たすことが、政治的権利とイコールでした。

フランス革命は、国民皆兵・徴兵制を産み、市民の平等を完成させた。とか。

現代のアメリカ軍など、志願制ですが、貧困層ばかり志願し、社会の分断を加速させているとか。

アメリカの銃規制問題でも、「強大な連邦政府など不要、正規軍も不要。自分の身は自分で守る。だから武装する。」というリバータリアンの思想の存在など。

日本の左右の議論ほど、単純な二分法では論じられません。

見よ、パフォーマンスの嵐

勿論、6000人の部隊が集結している訳ではなく、南関東に分散している各部隊から、少数が師団祭に集まっている形です。

資材輸送車
↑板妻駐屯地(34普連)から参戦の「イタヅマン」。どう見てもヘルダイバーにしか見えません
16式機動戦闘車
↑疾走する16式機動戦闘車(第1偵察戦闘大隊・朝霞駐屯地)。発砲音がスゴイ。
UH1J
↑第1飛行隊(立川駐屯地)のUH1Jが隊員を降下させます。

戦車がいないと何か物足りない・・・

コロナ禍前までは戦車が登場していました。最新鋭の10式戦車と2世代前の74式戦車の夢の競演みたいな。

まあ、ド迫力ですよね。体験試乗も74式戦車の後部にやぐらを組んで乗り込んでいました。

10式戦車
↑2017年の師団祭での10式戦車

ところが、戦車定数の削減により、各師団の戦車部隊は軒並み廃止。

74式戦車はまともな改修・延命を施さずに退役。

ここ第1師団でも、隷下の第1戦車大隊は廃止されてしまいました。北海道と九州を除くと、全国から戦車は消える予定です(富士教導団が唯一例外)。

今回展示の戦闘車両の目玉は、16式機動戦闘車)

装輪式の車体に、105ミリ砲を装備します。

16式機動戦闘車

一見、戦車と見間違いますが、主砲の口径や履帯(クローラー、キャタピラ)の有無で、違いは明らかです。

確かに利点はありますが、戦車の不整地踏破能力や火力には及ばない訳で、今般のウクライナ戦争を見ていても、やや不安になります。

師団祭をチェックしよう

東京23区で見られる数少ない自衛隊大規模イベントです。

ぜひ、来年以降の師団祭に来場してみて下さい。

また、新宿区の市ヶ谷地区では防衛省の見学ツアーを開催しています。

➡関連記事:防衛省見学ツアー当日レポート ~立入禁止の中へいざ!~【三島由紀夫の最期の場所】

23区内ではありませんが、23区のお隣、朝霞駐屯地には広報センターもあります。

➡関連記事:東京の軍事博物館~陸上自衛隊広報センターへ行ってみよう(軍隊と広報)

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