赤十字のマーク。そうあのレッドクロス。
最近あんまり見ないと思いませんか?
90年代くらいまでは、病院や薬箱とか、医療や救急関係、それを模した玩具ならば、あちこちにマークしてあったと思うんですが・・・。
実は、それには理由があります。
赤十字マークは赤十字社のマーク
赤十字のマークは、「医療や救急のマークだよね」という認識を多くの方が持っていると思いますが、これは善意の誤解です。
赤十字マークは、赤十字社(国際赤十字運動)という人道支援団体のマークです。
ちなみに十字架(キリスト教のシンボル)を避けるため、イスラム圏では赤新月を使用しています。
↑赤十字と赤新月
そして、このマークは、はっきりとその使用範囲と効力が法的に定められているのです。
つまり、むやみやたらに、勝手に使っていい訳ではないのです。
戦時国際法
その使用範囲ですが、国際法で定められています。
国際法には、平時国際法と戦時国際法がありますが(戦時国際法が無くなったという学説には与しません)、赤十字はこの後者を構成するジュネーブ条約によって特殊な地位を与えられています。
これにより、赤十字マークを使用していると、戦場で交戦当事者双方の攻撃から保護されます。
緊急時に例外はありますが、赤十字社のスタッフ(医師、看護師等)と軍隊の衛生部隊(衛生兵)に使用が認められています。
衛生兵というのは、聞きなれないかもしれませんが、医療担当の兵種です。
戦争映画では、「衛生兵!衛生兵!(メディック!メディック!)」の叫び声でお馴染みです。
↑外国軍隊の衛生部隊(攻撃を避けるため大きく赤十字が描かれている)
自衛隊も、国内の憲法論争は棚上げして、実質上「軍隊」なので、衛生部隊(衛生科)は赤十字マークを使用しています。
↑陸上自衛隊の衛生部隊の救急車(陸上自衛隊HPより)
彼ら(あるいは彼女ら)は、戦場で負傷者を保護・治療するために赤十字マークを使用する訳です。
故に、平時から、むやみに赤十字マークを使用していると、「いざ」という時に余計な混乱や不幸を招くわけです。
誤用に関しては国内法に罰則規定(6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金)もあるのでご注意を。
全然関係ありませんが、文明再興後の世界を舞台にした「∀ガンダム」で、赤十字マークが「弾が当たらない為の、古いおまじない」として語られていたのは秀逸な演出だと思いました。