監督 佐藤竜雄 1998年公開
テレビ版の思い出
実は、テレビアニメ版「機動戦艦ナデシコ」は、あまり好きではありませんでした。
通して全26話をリアル視聴しましたが、挿入されてくる劇中劇「ゲキガンガー」は好きになれなかったし、ユリカやアキトのドタバタ・ラブコメにも辟易、エステバリスのデザインにも惹かれなかったし、ルリルリにも萌えなかった。
まあ、当時、アニメーション自体に食傷気味であったのもありますが、それを差し引いても、他の連続アニメと同じく、記憶の彼方に追いやられる運命だった筈です。
実際、テレビ版のストーリーは、詳しく覚えていません。
なんか、火星人が攻めてきて、地球連合軍が苦戦していて、軍需産業の造った新鋭宇宙戦艦の「ナデシコ」で押し返したら、実は火星人は、かつて追放された同じ地球人で・・・云々。でしたっけ?
細部は忘れました。本当に、テレビ版観終わった後は、ほとんど存在を忘れていて、「そんなアニメあったなぁ」と言われて気付くレベルだったんです。
しかし、しかし、しかし!!
そんな運命を変える「事件」が起きます!
放送翌年(1998年)続篇としての劇場版アニメ「機動戦艦ナデシコ -The prince of darkness-」が公開されました。
もちろん、期待値はメチャクチャ低かったです。「とりあえず観とくか」程度でレンタルした記憶があります。
・・・何ですか、これは。
アニメイトに走りましたね、ソフト買いに。
傑作じゃないですか。面白過ぎじゃないですか。
全てが詰まった80分
テレビ版は本放送の1回のみしか観ませんでしたが、劇場版ナデシコは、もう何回観たのか忘れるくらい観ました。毎年一回は観ています。
テレビシリーズだと過剰だったギャグ演出が抑えられて、バランスのいい形になりました。
伏線も過剰ではなく、最終的には上手く回収されています。
以下、箇条書きで、本作への思いの丈を綴っていきます。
- アマテラス攻防戦は、マクロス並みの戦闘の細やかさがあって好き。
- 一種の「同窓会」モノとして、過去キャラがただファンサービスで顔出ししてくる、という愚は犯さずに、各人がチョイ役であっても、ストーリーに絡んできて、活躍の舞台を用意されている脚本の妙に脱帽!
- 少女漫画誌「うるるん」のリアリティが凄い。続きが読みたい!
- 墓地での戦闘シーンはいい!あのアクションサービスが小火器だけじゃなく背広で日本刀を構えるとか最高。
- 首謀者・草壁春樹が中将なところがいい!あれが大佐や元帥だと興醒めだ。
- ルリルリ(11歳)には萌えませんでしたが、星野ルリ少佐(16歳)、貴女の為なら死ねます。
- ミスマル・コウイチロを筆頭とする連合宇宙軍首脳部の、ゆるゆるな感じが一服の清涼剤。
- ヤマサキ博士みたいな、ヘラヘラしていてどこか憎めない悪党って魅力的(パトレイバーの内海課長とか、ジオブリーダーズの入江とか)。
- ウリバタケ整備班長はパトレイバーの特車二課整備班のシバシゲオと被っているが問題ない。
- モブ女子が可愛い!(モブ女子が可愛いアニメは名作が多いのが持論)
とまあ、勝手に書き殴っていますが、途中、一切「だれる」ことなく、80分間を登場人物たちと走り切った爽快感を鑑賞後に味わえます。
どっちも好きな人はいない?
周りの話を聞いていると、テレビ版好きな人は劇場版が嫌い、劇場版好きな人はテレビ版嫌い、のような現象があるらしい(私は勿論、後者)。
この関係で思い出したのが、「うる星やつら」シリーズと、劇場版「うる星やつら2~ビューティフルドリーマー」です。
この作品も、同じような現象が起きています。
押井守フリークの小生ですが、やはり、「うる星やつら2~ビューティフルドリーマー」を崇め奉っていますが、「うる星やつら」自体は嫌い云々よりも興味が湧かない。
この現象は何でしょうかね。
強いて言えば、共に舞台装置(舞台設定)自体から引き出せる要素、つまり個性豊かなキャラクター達、サイドストーリーや「遊び」をやれる世界観の広がりがあって、「料理」し易い。
もちろん、料理は料理人(監督、脚本家)の腕や個性に引き摺られるので、基になったオリジナルシリーズとかけ離れるリスク(あるいはチャンス)もあります。
劇場版ナデシコもビューティフルドリーマーも、その成功例(逆に失敗、改悪と言うファンもいるでしょうが)ではないでしょうか。
呪いになったアニメ
ナデシコも、既に四半世紀が経とうとしています。
劇場版ナデシコの終わり方には賛否あるようで、続編を希望する声も大きかったです。
しかしながら、どうやら、あれで「お開き」。終わりです。
これはこれで残念ではあるのですが、あそこまでの傑作が完結篇で、正直「良かった」という思いもあります。
ナデシコのテレビ放映が1996年から1997年でしたが、その前年には同じテレビ東京系列で「新世紀エヴァンゲリオン」が放映されました。
こちらは、その完結まで足掛け四半世紀かかりました。
正直、エヴァンゲリオンのように延々と続けられるよりは遥かに良い。
個人的には、エヴァの完結篇となった「シン・エヴァンゲリオン劇場版」を観終わった感想は、作品の良し悪しとかではなく、「とにかくやっと終わった」「もう待たなくていい」という解放感・安心感、憑き物が落ちたといった感覚で、それ以上でも以下でもなかった。
もう何も語りたくない、と思ってしまったのです。
これは、ほとんど「呪い」みたいなものです。
劇場版ナデシコは、傑作として、そのまま、そっとしておくのが最善な気がします。
(あ、でもナデシコBの活躍やホウメイガールズのアイドル物語なら観たいかも)