今回は自衛隊が活躍(暗躍?)するコミックをご紹介します。
ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり
東京・銀座に突如現れた「ゲート(門)」から、中世ヨーロッパを思わせる軍隊とその軍勢が使役する怪異(ゴブリン等、オーガ等)が現れ、銀座の街を蹂躙!
無防備な市民を殺戮し、阿鼻叫喚の中、ひとりの非番の自衛官が機転を利かせ、機動隊と協力し、時間を稼ぐ。
やがて、緊急出動した陸上自衛隊は、彼らを撃退し、「ゲート」に逆侵攻、そこに、未知の世界を発見する!
・・・と、こんな感じで始まるコミックです。
ゲート=超空間通路を通って、異世界の侵略を受け、それを撃退し、向こう側に逆侵攻する。
・・・こう書くと、神林長平のハードSF『戦闘妖精・雪風』とそっくり!
でも、全然違います。
本作は、ラブコメとミリタリーが幸せな結婚をした大ヒットライトノベル、柳内たくみ『ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』の忠実なコミカライズです。
モンスターやエルフがいて、魔法がある中世ヨーロッパな異世界に近代兵器を持った軍隊(自衛隊)が進出して、戦闘、調査、外交、そして恋をしたりと、オタク心をくすぐる。
コミカライズを担当したのが竿尾悟。そう!あの『コンビニDMZ』でミリオタのハートをがっちり掴んだあの作者です!
ミリタリー演出に定評のある漫画家さんだけあって、軍事描写のリアリティー、精緻さは折り紙付き。
派遣されている部隊は、特地(特別地域=日本政府側の異世界の呼称)からの緊急撤収の際の装備遺棄の可能性を考慮し、二線級や退役間近の装備を持ち込んでいます。
10式戦車や90式戦車ではなく、74式戦車。89式小銃ではなく64式小銃。アパッチではなくコブラ。F35やF15、F2ではなくF4じいさん・・・etc.
まあ、特地側の文明レベルが、魔法があったとしても中世レベルと現代では、ロートル兵器でも十分無双状態です。
また、原作とは違った漫画故の小ネタが嬉しい!『コンビニDMZ』のキャラクターも随所にゲスト出演。探してみるのも一興かと(隠れミッキーか!)。
ところで、本作の陸上自衛隊特地方面派遣隊は、既存のナンバー部隊が出てきません。
本来、銀座のゲートから陸自が進出しているのだから、当然、第1師団が投入されたり、または他の戦略単位(第6、10師団とか第12旅団とか)が、都内を掃討した第1師団に代わって投入されそうですが、各地の部隊から抽出して、3個師団相当の規模、4個戦闘団基幹の方面隊を臨時に編成しています(そんなに引き抜いたら、引き抜かれた部隊ががスカスカだ)
。
通常通りの建制で派遣した方が、大規模な集成をするよりも練度や連携に不安が少ないようにも思いますが、どうなんでしょう。
そのまま投入されているのは、第一空挺団と特殊作戦群だけに見えます。
そういえば、自衛官の登場人物の名前が自衛隊の駐屯地や基地の名前が使われていて、ちょっとややこしいかも・・・(主人公が伊丹=伊丹駐屯地ですからね)。
ジオブリーダーズ
「そう、その後の膨大な死と破壊に繋がるー。それが最初の一人だった。」
(第14巻より)
昭和70年。
綾金市にある神楽綜合警備に中途入社した田波洋一を待っていたのは、社会の裏に暗躍する「化け猫」退治のお仕事だった!
個性的?な同僚(美女)たちとドタバタな毎日を送る中、田波と彼女たちは、やがて、この国に隠された「闇」に関わっていくことになる・・・。
いやあー、化けた化けた
(化け猫だけに)。
リアルタイムで連載を読んでた身としましては、こんな展開に進んでいくとは思わなかった(誉めている)。
最初はハーレム状態の主人公のドタバタ、ガンアクションだと踏んでいましたから。
でも、1巻で、社長と高見ちゃんがやっていたテレビゲームがヤバい辺りから兆候が見えてきました。
だって、自衛隊vs.米軍だもん。
画面上には、三沢の在日米空軍第432戦闘航空団と空自303飛行隊の交戦状況(笑)。
冗談はさておき、話が進む内に、化け猫の組織化、謎の指導者「黒猫」の登場。
人間側も。厚生省とその特殊部隊「ハウンド」に続いて、自衛隊、米軍の介入・・・。
そして、もう一人の主人公ともいうべき謎の政府職員「入江省三」の暗躍。
そんな本書の圧巻は第14巻。
昭和51年9月、北海道函館。
そう、ミグ25亡命事件(ベレンコ事件)と化け猫、そして神楽の因縁です。
思うに、ジオブリーダーズは、政治や国家の「闇」を描くことも、一つのテーマとなっている。建前の民主主義や自由社会の裏の顔。
自衛隊も徹底的にその視点から描かれます(ちょっと軍閥化してるかも)。
なお、入江省三には、彼を主人公とした『ロウマンS 』があります。
また、本作の原発占拠事件の顛末を描いいたスピンオフとして、『ジオブリーダーズAA(アトミックアタック)』も併せてどうぞ。
妖傀愚連隊
ジオブリーダーズが長期休載に入ってしまい(もう何年だ!)、悶々としている皆さんに朗報です。
化け猫ではありませんが、妖怪vs.自衛隊を描いているコミックを発見しました!
突如、富士の裾野に現れた「城」と妖怪の大群。多大な市民の犠牲を出した、この「中央道騒乱」を鎮圧した自衛隊。
やがて、政府の管理下に置かれた妖怪たちは、安価な労働力として重宝される一方、差別と偏見に晒され、テロに走る者も現れる。
そんな世情の不安に対し、防衛省情報本部内に、妖怪のみで構成された特殊部隊が密かに発足した
妖怪の特殊部隊を結成して、敵性妖怪を排除するという「同族殺し」をさせるところが、権力の闇を感じさせますね。
この作品、ミリタリー的にも凝っていますが、ヘイトスピーチ、人種差別といった社会問題を、「妖怪」という衣を借りて上手く描いています。
この特殊部隊は陸上自衛隊立川駐屯地に駐屯しているので「立川作業班」と称されています。
主人公の女子高生稲生真琴は中央道騒乱で、母を失い、孤児となったが、その「生い立ち」の“秘密”から立川作業班班長として、銃を握ります。
色々と小ネタが面白い。
個人的に一番好きなキャラは隊員の狸の喜左衛門なんですが、7話の表紙を見ると、え?日露戦争に従軍?
(気になる方「軍隊狸」で検索してね)
小林源文
もはや説明不要!戦争劇画の巨匠!第一人者!一等自営業!
押しも押されぬ、この分野の帝王です。
迫力ある絵柄と、細部まで書き込まれた筆致。
あらゆる戦史、架空戦史を描いてる大御所です。今回は、自衛隊が活躍する作品群をピックアップ!
バトルオーバー北海道
ソ連軍北海道侵攻という、「第三次世界大戦」の悪夢を描いた長編です。
詳しくは、こちらの記事をどうぞ
→小林源文の漫画で,米ソ冷戦を振り返る~ソ連軍日本侵攻!?~
レイドオントーキョー
日米安保破棄、左派政権成立の中、ソ連軍が新潟に上陸!孤立無援の自衛隊が、関越道で、永田町で、日本海で、戦います。
緻密な作画に脱帽です!
詳しくは、こちらの記事をどうぞ
→小林源文の漫画で,米ソ冷戦を振り返る~ソ連軍日本侵攻!?~
「オメガ」シリーズ
自衛隊に密かに結成された特殊部隊「オメガ」が世界各地に出動するシリーズです。多数出版されており、各作品にストーリーに繋がりが無かったりしますが、部隊のメンバーである小松、平岡、田中、部隊を諜報面でサポートする佐藤&中村、そして全てを統括する斉藤統幕議長らの顔触れは同じです。
昨日はカンボジア、今日はイラク、明日は北朝鮮・・・東奔西走です。
平成維新
憂国の青年幹部自衛官によって、第1空挺団と第1師団が決起。昔懐かしい自衛隊クーデターものです。
都内で決起部隊と鎮圧部隊(富士教導団等)の戦闘が展開されます。
そして、毎度お馴染み佐藤三佐が暗躍します(中村も状況を悪化させます(笑))
レッドサンライジング
「臨時ニュースを申し上げます。防衛庁発表、本日未明、中部太平洋において帝国自衛隊は米国と交戦状態に入レリ。ハワイを占領しました。」
本書より
2025年の「もしや」を描いた第二次太平洋戦争モノです。
発売当時は、『日米決戦2025』というアンソロジーコミックに所収されていました。
※前述の『平成維新』にも所収されています。
出るわ出るわ。空想兵器のオンパレードで、現実の自衛隊は全く関係ありません(笑)
超電導潜水艦や多胴式空母、ハインラインの『宇宙の戦士』のオマージュといえるパワードスーツ。衛星軌道からのレーザー爆撃・・・。
超ハイテク兵器で、米軍をコテンパにします。
ここからは妄想ですが、庵野秀明のSFアニメ「トップをねらえ!」の世界線なのかな?とも思えます。あれは、バブルが弾けなった日本が米国に第二次太平洋戦争を圧勝し、その後、天皇を人類統合の象徴に戴く「地球帝国」を建国しますから。