惜しかったアニメ「BLUE SEED」(ブルーシード)

“現代に蘇った古の神々と日本政府の戦い”

という、胸熱なコンセプトのテレビアニメーションが、1994年~1995年にテレビ東京系で放送されました。

こんな、民俗学・日本神話を散りばめて、それに政府・自衛隊も絡めて、そんな伝奇モノの作品が面白くないわけない!

※以下ネタバレあり

不穏!不穏!

なんせ、OPが期待感を盛り上げる!

歌のサビでは、道路を進んでくる90式戦車の大部隊、F15戦闘機の編隊、護衛艦の艦砲射撃、と、緊迫感が絶頂に!

そして、終盤、東京に現れる巨体な「何か」を包囲するAH1Sコブラ対戦車ヘリコプターの大編隊!

とにかく、不穏な激しい戦いを暗示するシーンの連発 。

傑作OPです!

F15

ふたりの巫女を巡る攻防

日本に現れる「敵」は「荒神(あらがみ)」と総称される古代からの異形。

主人公は、出雲に住む女子高生、藤宮紅葉。

巫女としての彼女の持つ「クシナダ(奇稲田)」の力が、人間側(日本政府)にとっても荒神側にとっても切り札となるために、両者の争奪戦になります。

彼女を人柱にすれば、荒神を殲滅できる。

彼女の姉は既に、荒神側に寝返っていて、彼女こそ最後の希望。

第一話~二話では、いきなり、出雲大社近くに、紅葉を狙う荒神、ヤマタノオロチが出現するという大サービス!(ラスボスじゃなくて大丈夫?)

ヤマタノオロチ出現を伝える報道特別番組を官邸で見つめる首相と官房長官の口からも、「これからが国難」という言葉が洩れる。

緊迫感半端ない!

これからのシリアスな展開に期待が膨らみます。

政府の特務機関

この荒神に対抗するのが、政府の特務機関「国土管理室」(正式名称:総理府国土保安特別対策委員会国土管室)。総理府の部局だが、内閣と直結し、超法規的権限を持つ。

警視庁や陸上自衛隊、経済企画庁、科学技術庁、更には陰陽師まで加えた、その道のスペシャリストを集めた特務機関。

ワクワクしますね!

往年の「怪奇大作戦」シリーズのSRI(科学捜査研究所)を彷彿とさせます。

第三話では、冒頭、夜の都内の公園で惨殺される(荒神に喰われる)若い女性のシーン(遺体の脚だけ映る)など、不穏な演出もなされ、これからの凄惨な戦いをイメージさせられる。

完全なミスマッチ

・・・と、これだけ、引っ張といて何ですが・・・。

うん・・・確かに、全話観たんだけど、なんか、こう・・・。

違う。何かが違う。

とにかく、最初に期待したシリアス路線、伝奇×怪奇×エログロ?要素は綺麗に削ぎ落ちてしまいます。

原因としては、序盤のおどろおどろしさに対して、主人公のギャグ的性格&妙なラブコメ展開が完全にミスマッチしていた点でしょうか。

伝奇モノとラブコメの相性の悪さといったらこの上ない。

この呉越同舟状態が延々と続きます。

終盤、ややシリアス路線に回帰します。代々木に出現した巨大な勾玉、荒神により、日本全土が青い光に包まれる中、アメリカ第七艦隊の空母から東京への核攻撃が迫る!(最後は米軍の核兵器頼りなのはお約束です)。

ただ、いかんせ、それまでの、ダラダラ感が・・・。

神回「日本(やまと)よ まほろば 嘆きの若狭」

散々に言っていますが、神回とも言えるのが第16話「日本(やまと)よ まほろば 嘆きの若狭」。

大学時代の旧友である民俗学者の大和根の急死の知らせを受け、国土管理室室長の国木田は、遠く若狭の寒村を訪れる。そこで彼は、大和根の内縁の妻を名乗る美女に出合い、彼女から、国木田宛の手紙を渡される。

そこに彼は、日本で起きている怪現象(荒神の関わる)は、「古代の神々による禊だ」と言い、物質至上主義に毒された日本を論難します。

なんか、「ガサラキ」の西田さんみたいです。

国木田自身にも、「現代日本」を守る事の意味を悩ませる回です。

そして、この謎めいた美女の正体が・・・。

この回は、紅葉らラブコメ陣の出番がなく、終始、旅情感と哀愁漂う回になっています(ぶっちゃけ全篇この調子で良くないか?)

こんな神回もあったのですが、全体を通すと、シリアス路線とラブコメ路線がどっちつかずで・・・。

という訳で、とにかく「惜しい」という評価のアニメシリーズだったと感じます。

(★関連記事:「ガサラキ」~異色のロボットアニメ~(幻想の日米対等論)

シリアス×エログロ路線

そんな、ブルーシードでのモヤモヤを解消してくれる2作品があります!

まず1つ目は、アニメ「デビルマンレディー」(全26話、1998年~1999年)。

まあ、ぶっちゃけ、ややトラウマになります(誉めてる)。

原作「デビルマン」とは全く世界観を共有していません、別物です。

主人公のファッションモデル・不動ジュン(CV:岩男潤子)が、人に害をなす異形(ビースト)らを、同じく異形の力を持つ「デビルマン」に変身し、戦っていく。

こう書くと、普通の変身特撮モノみたいですが・・・全然違います。

よい子には見せられません。

ビーストとの戦いに対ビースト国際組織HA(人間同盟)や米国政府、日本政府・自衛隊の思惑が交錯。

主人公とその周辺の人物の運命もかなり過酷。

作品全体には、絶望感が漂い、グロテスクで官能的な演出がなされます。

民俗学的、日本的な要素はありませんが、ブルーシードに足りなかった「毒々しさ」を愉しめるでしょう・・・。

シリアス×伝奇

もう一つは、とり・みき による漫画『石神伝説』。

新聞記者の桂木真理は、不可解な地下鉄落盤事故を取材する中、地下鉄構内で、陸上自衛隊と巨大な遮光器土偶が交戦する現場を目撃する!

それは、現代日本と、封印されし古代の神々との戦いの序章に過ぎなかった。

日本各地で、古代の神々の封印を解く謎の少年白鳥と、霊的な力を使い、それを阻止する謎の自衛官石神一尉の戦いに巻き込まれながら、真理は、自身の「秘密」にも迫っていく・・・。

これぞ、伝奇!民俗学的、神話的知識を背景に、現代日本(自衛隊)と神々との戦いが描かれる傑作です!

例えるなら、漫画界における荒俣宏の『帝都物語』といっても過言ではない!

これが、読みたかったんだよ!

ブルーシードで満足できなかった方には、絶対おすすめです!

・・・しかし惜しむらくは、掲載誌の休刊の為に、未完!!

なんとか、復活・再開を願ってやみません。