「機動警察パトレイバー2theMovie」4DXの感想~君はTOKYOウォーズの当事者となる

「劇場版パトレイバーtheMovie 4DX」に続いて、まさかの「機動警察パトレイバー2theMovie 4DX」の上映!

今回は、この押井守監督の最高傑作にして最大の問題作とも言えるパトレイバー2(パト2)4DXの鑑賞レポートをお届けします。

PKO部隊全滅す

そもそも、語りの場面が多いポリティカルフィクションであるパト2。そんな“静謐な緊張感”に包まれた本作を4DXにする必要があるのか?

一応説明しておきますと、4DXは、映画のシーンに連動して、座席が上下左右前後に移動・振動し、匂い(香り)、バブル(泡)、フラッシュ(光)、水(!)などの環境効果(エフェクト)を体感できるという映画の新しい形です。

故にアクション作品の方が、どちらかというと向いているように思えます。

しかし、そんな疑問は、はっきり言って杞憂でした。

冒頭、PKO派遣陸上自衛隊レイバー部隊がゲリラ・反政府軍の攻撃で一方的に全滅していくシーンで、そんな憂いは吹き飛んでしまったのです。

レイバーの歩行に合わせて動く座席。

ミサイルや爆発に合わせて炸裂するフラッシュやスモーク。

特に、柘植が堪え切れずに、発射トリガーを引いて発砲した時の振動は、文字通り柘植の「戦争」を体感している気分になります。

幻の空爆

パト2屈指の名場面のひとつと言えば、三沢基地を発進したF16(ワイバーン)と要撃に上がるF15、それを指揮する中空SOC(中部航空方面隊作戦指揮所)の息詰まる「首都防空」を描いた、いわゆる「幻の空爆」ですよね。

F15イーグルプラスの動きに合わせて座席は空を舞っているイメージで動きます。

なお、今回の4DXは、何かと議論の絶えない(?)サウンドリニューアル版です。ですので、この中空SOCの幹部自衛官の声も、素人感のない声優バージョンです。

浮遊する「戦争と平和」

おそらく、押井監督の思想が滔々を語られるという、アニメーション史上、類を見ない荒川と後藤による「戦争と平和」の問答。

ここでは、後藤隊長と同じように船に揺られる演出がなされます。

後藤と荒川の会話に耳を傾けていると、その船の揺れが、不思議な浮遊感を与えて、どこか「遠い」ところに導かれる感覚に襲われました。

まさに、その問答の世界、「戦争と平和」という観念の世界に・・。

ちなみに、この問答を中心に、パト2という作品の元ネタというか、思想的背景になった本があります。ご興味のある方は、こちらの記事をどうぞ↓

「戦車よ、あれが東京の()だ」

自衛隊による治安出動。

緊張感はピークに達します。

ここでは、90式戦車の乗員を体感できます。走る戦車(輸送トレーラー)の振動がイスから伝わり、スクリーンの戦車を見上げる人々の表情が交錯します。

そして、首都へ配備された自衛隊員たちの頭上に雪が舞います。

館内にも雪がちらつきます。

雪の輪舞(ロンド)

南雲隊長と柘植の運河での密会シーン。

船に乗っているような感じは味わえるのですが、残念ながら雪の量が少ない。もっと館内全体に、しんしんと降ればいいのに・・・。

加えて、この雪のエフェクト。稼働時に、結構、大きな機械音が天井から響きます。あの艶ぽいシーンが、やや台無しでは・・・。

仕方ないので「これは、きっと上空を擦過してゆく自衛隊機の爆音だ。」と、無理矢理思うことで納得しました(まあ治安出動下なんでありえるよね)。

patlabor2-goto

首都蹂躙

冒頭に続いての激しいエフェクトを体感できる攻撃ヘリ「ヘルハウンド」による首都蹂躙です。

バルカン砲射撃、爆発、誘導弾、爆発・・・

エフェクトが大活躍ですが、特に、匂いのエフェクトで、硝煙の匂い(火薬臭)は驚かされました。

まさに「戦場」。スクリーンに映る戦火に晒される東京が、観客を、TOKYOウォーズの当事者と錯覚させてくれます。

そして、新宿に墜落する黄色い飛行船。

さあ、ガスは?黄色いガスは?(期待大)

・・・スモークが館内に噴き出しますが、さすがに黄色ではなかったです。白煙でした。

門番(イクストル)との戦い

そして最後に残されたお楽しみは、地下トンネルの攻防ですね。

ここは、皆さんご想像される通り、「火星野郎」ことイクストル君がバルカン砲を撃ちまくってくれるので、「戦場」をこれでもかと体感できます。

総括

残念、というか惜しい点は、「雪」の演出でしょう。

雨と違って、雪やスモークは量が少ない感があります。

雪は前列でちらつく程度です。おそらく前列の方が、雪なりスモークを体感できると思います。

(なお、雪のエフェクトは導入していない劇場もありますので、事前に電話確認がオススメ)

とはいえ、それを差し引いても、観る価値はあります。

個人的な雑記

パト2は、それこそ何十回観てきたのか覚えていませんが(皆さんも同じでしょう?)、劇場のスクリーンで見るのは、公開当時1993年から28年ぶりでした。

やはり、4DX抜きにしても、劇場スクリーンで観るのは、自宅で鑑賞するのとは全く違う体験だなあ、と強く想いました。

これは、映画館での唯一無二のものであると。

あと、通しで全編観るのは久し振りだったのですが、南雲しのぶ、あんなに色っぽい、艶やかな女性キャラだったかと、驚きました。

ちなみに、今回の上映は2021年2月。

パト2の舞台になるのも同じく2月です。どう考えても、確信犯的に2月を選んだんでしょうね。

下記の記事では、パト2の劇中における「TOKYOウォーズ」のタイムライン・時系列を追っているので、是非、ご覧ください↓

シミュレーションはどこまで行くか

先述しましたが、パト2の土台・背景になったであろう本で、社会思想史家の市田良彦は、こんなことを言っています。「シミュレーション」についてです。

それは所詮は代理にすぎず、代理による快楽に味をしめた人間は、本物に手を出したくなってしまうという点、ある線を超えると、代理は逆に欲求不満を増進せずにはいないだろう。

小説の詳細な記述、解像度を上げ、大がかりになってゆく映像、複雑さを増すゲームのプロセス、それはひとたびもの足りなさを感じてしまった人間にとって、視界をさえぎる雲に反転する。※1

まさに4DXですね。

この進化はまだ続くでしょう。この後、映像「シミュレーション」は、どこまで行くのでしょうか?

戦場になった東京を疑似体験する日が来るか、または、本当に東京が戦場になる日がくるか。どちらが早いか。

※1.市田良彦・他著『<ワードマップ>戦争~思想・歴史・想像力』新曜社、1989年、4-5頁。