NHK「エマージェンシーコール 〜緊急通報指令室〜」~壮絶すぎる119番通報の最前線【感想・雑感】

2022年1月13日午後10時30分にNHK総合で放送されたドキュメンタリーです(放送時間30分)。

横浜市消防局警防部司令課、司令センターを密着取材したもので、ナレーションもBGMもなく、淡々と、119番通報の受理の様子を追ったNHKらしい禁欲的な番組でした。

NHK「エマージェンシーコール」の再放送

2022年1月13日(木)に「エマージェンシーコール 〜緊急通報指令室〜」初回放送後、

多くの反響に応えてアンコールにより、2022年2月23日(水・祝)午後6:05よりNHK総合にて再放送されました。

NHK「エマージェンシーコール」見逃した方へ

2022年3月12日(土)23:59まで、U-NEXT(ユーネクスト)で配信予定です。

多くの方に見ていただきたい良いドキュメンタリーです。

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常に修羅場

今回の番組で取り上げられた横浜市消防局は、職員3500名あまりを擁する国内有数の大規模消防本部です。

(都道府県単位の警察と違って、消防は自治体単位で設置されます)

その管轄内の人口377000人余りを数えます。

そこで起きる火災・救助・救急の出動要請を引き受けるのが、今回の舞台である横浜市保土ヶ谷区にある司令センターです。

1日の通報件数800件という膨大な数の通報を処理しています。

そこは常に修羅場です。

例えば、普通の会社勤務をしていても、クレームとかトラブルとかが、常時発生するという職業は、そう多くはないでしょう。

ところが、119番通報は、全てトラブル、危機からのSOSです。人命に関わる。

通報者はパニック状態が普通。

それを、淡々と、冷静に処理していく司令員の精神力は並大抵のものではありません。

headphone

日常の裂け目の非日常

終盤、帰宅した娘が倒れている父親を発見して、通報してきた事例は、壮絶なものがありました。

動転している娘に、冷静に心臓マッサージの指示を与える司令員。

娘は泣きながら必死の心臓マッサージを続けます。

「ごめん、お父さん!出かけなきゃよかった!」

「なんでこんなことに・・・」

日常の中に、突然ぽっかりと、非日常の裂け目が現れることを思い知らされます。

そんな、裂け目に落ちた時に、それを受け止めるセーフティーネットとして消防があります。

消防だけではなく、警察、海上保安庁、自衛隊。

これらの機関と人々は24時間、その「非日常」に陥った人々を助けようと、待機し続けています。

今回の消防や警察。

緊急通報(119番・110番)を受理してから、消防車や救急車、あるいは警察官が現場に到着する時間(レスポンスタイム)は、地域差がありますが10分以内のようです。

また、海の警察・救助機関である海上保安庁も常に備えています。

自衛隊は、緊急事態(災害の発生等)に備えて、全国の部隊の一部が常に「初動対処部隊(
ファスト・フォース)」に指定され、緊急出動に備えています。

我々の日常生活は、こういった人たちによって陰から支えられている訳です。

「市民」としての責任と義務

番組中盤では、いわゆる「不適切通報」「緊急ではない通報」の映像もありました。

「家の裏で猫が鳴いていて、うるさいから何とかして」

などは開いた口がふさがりませんでしたが、そういう通報は珍しいものではないようです。

挙句には、罵声を浴びせて即電話を切る輩も出てきました。

また、非協力的な通報者もいました。

意識不明の急病人への心臓マッサージを拒否。

「早く来い」の一点張りです。

司令員の苦労が垣間見えるケースでしたが、別の角度から見ると、そこには「市民」と言うものの不在が見えてきます。

「市民」といっても、横浜市民とか京都市民とかの市民ではなくて、政治学などの学問上の「市民」概念のお話です(特に共和主義での)。

確かに、戦後日本は、民主主義を原理として、権力機構も民主化されてきました。

国家は国民に行政サービスを提供し、概して強権的な存在ではありません。

しかし、国民の側が、その民主主義において、甘受するだけで、能動的・積極的な社会参加・政治参加を行っているとは言い難いのも事実です。「政治からの自由(権利)」が強い面があります。

そんな民主主義に異議を唱え、修正を促しているのが、「共和主義」という考え方です。

共和主義は「市民的徳」を重視します。これは、市民が、高い公共精神を持って、社会をよりよくするために政治参加をして個人も社会も良くしていくという考え方です。「政治への自由(義務)」の面も加味されるのです。

「非日常」(事件・事故・災害等)に対して、人々はどこか他人事であり、「誰かがやってくれればいい」という悪しき個人主義に陥っていないでしょうか?

その一端が顕在化しているのが、今日の不適切通報や悪戯通報などかもしれないと。

↑救急車の、ぴーと君は頻発する不適切通報に怒って、消防署を飛び出してしまいます・・・

薄氷の上の緊急通報制度

悪しき個人主義の蔓延は、共同体・社会の自助(自浄)作用も低下させます。

司令員のひとりが、福祉の案件が増えている感じがするということを話していました。

共同体(地域や家族等)が機能せず(あるいは空洞化し)、寄る辺なさに、119番に通報するという状態です。

しかし、それは、公共機関の仕事では本来ないのです。

消防や警察のような公助機関は、最低限のことしかできません(逆に出来てしまうと、それはそれで危ない方向に行ってしまいます)

あくまで、市民の公共心・善意、先ほどの「市民的徳」を前提に成立しています。

それが、崩壊してしまうと、緊急通報制度自体がパンクし、崩壊します。

「10分以内に助けに来てくれる」という、この素晴らしいシステムは、実は薄氷の上にあることを今一度考えてみる必要があります。

緊急通報番号いくつあるか知っていますか?

さて、問題です。緊急通報番号は、いくつあるでしょう?

「え?110番と119番でしょ?」

実はそれだけではありません。

118番が存在します。

これは海上保安庁緊急通報番号です。つまり、海での事件・事故(遭難)です。2000年から運用されていますが、知名度がイマイチ・・・。

緊急通報ではない場合の相談ダイヤルとしては、警察の「♯9110」、救急の「♯7119」などもありますので、こちらを利用できれば、緊急通報システムへの負荷を軽減できますね。

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