連載①は、こちらです。
→「シン・ゴジラの考察~怪獣映画の「政治」の描き方~連載① 【「ゴジラ(1984年版)」の挫折】」
「イエスまた「汝の名は何か」と問い給えば「我が名はレギオン、我ら多きが故なり」と答えり」
マルコ伝 5章9節
「ガメラ2 レギオン襲来」は、ゴジラ84と同様、過去作を白紙にして、仕切り直しで「ガメラ」という巨大生物を描いた平成ガメラシリーズ3部作の第2作です。
あらすじ「ガメラ2 レギオン襲来」
北海道恵庭岳付近に隕石が落下。
陸上自衛隊化学学校の渡良瀬二佐らは、調査に赴くが、不可解なことに隕石本体を発見できなかった。
それ以降、不可解な事件が頻発し、その現場は、ゆっくり札幌市に近づいていた。
そして隕石落下から5日後、札幌中心部で、正体不明の生物群による地下鉄襲撃事件が発生。
更に、すすきのに巨大植物が出現。
陸上自衛隊は、巨大植物(草体)と不明生物群(群体)の掃討作戦を開始するが、直後、消息不明だったガメラが1年ぶりに出現し、飛来。
草体を破壊、群体と交戦する。
ガメラは再び飛び去り、レギオンと称された群体も夜空に飛び去る。
そして、今度は仙台市中心部に草体が出現。
ガメラが再出現し、草体を破壊しようとするが、巨大なレギオンが出現し、これに阻止されてしまい、草体は種子拡散のための大爆発を起こし仙台市は消滅する。
爆発に巻き込まれ、ガメラも力尽きてしまう。
そして、レギオンは、更に南下し、東京を目指すことが確実視されるに及んで、日本政府は自衛隊に防衛出動を命令する。
かくして北関東にて、レギオンとの決戦の火蓋が切って落とされた。
キャッチコピーは「消滅するのは、日本か、レギオンか」
SFとしての怪獣映画
一言で言えば、宇宙からの侵略ものです。
レギオン(マルコ伝の悪霊、転じてローマ軍団)と呼称される地球に落下したレギオンは膨大な酸素ガスを放出する為、地球の生態系が破壊されてしまう。
また、電磁波を自分たちのコミュニケーションを阻害する「敵」と認識するため、現代文明を攻撃してくる。
そんな感じで、まあこの辺は、本論の論点ではないので飛ばします。
自衛隊の広報映画
公開当時、「自衛隊の広報映画か」て程に、他の怪獣映画と一線を画す、脚本と演出が話題になりました。
そもそも幹部自衛官が主人公!
前半の舞台は北海道。災害派遣でちゃんと出動しますし、地下鉄での群体レギオンの掃討も、普通科(歩兵)の装備で対応します(いきなり戦車!とかありません)。

北関東での決戦も、1個師団がレギオンと戦います。
おそらく北関東の防衛警備を担任する第12師団でしょう。
師団指揮所(DCP)で師団長以下、幕僚が指揮を執ります。
ちゃんと師団第三部長や第二部長もクレジット付きで登場。
このDCPではラインとスタッフがしっかり描かれています。
ライン(指揮系統)である師団長の決心をスタッフ(幕僚たち)が情報を提供し補佐する。レギオンではなく、普通に仮想敵国の軍隊と戦闘していても違和感がないリアリティがあります。
まだ、統合任務部隊ではないので、空自に対して近接航空支援を「要請」している。

まだ足りない何かと余計な何か
観れば、胸アツ間違いなし!
そんな意欲作である本作ですが、やっぱり何かが足りない。
うーん、自衛隊のリアリティはある。
でも、その「上」の描写が少なすぎる。
「上」というのは日本政府首脳部。
ちゃんと動いているのはわかるんだけど、そこの描写が少ないものだから、何か、自衛隊だけが突出しているように見えてしまう。
官房長官が緊急会見で防衛出動を発表するシーンとかはあるんですが、何か緊迫感に欠ける。
結局、自衛隊は日本政府の「一部」に過ぎないので、もう少し、政府全体として危機感を抱いて対応している感がないと、渡良瀬二佐の周りだけの物語に見えてしまう。
キャッチコピー負けですね。
その意味ではゴジラ84の方が緊張感も緊迫感も絶望感もあった。
この「国難」の無さが、ガメラ2最大の欠点でしょう。

あと、完全に蛇足になっているのが、子供たちのシーン。
ところどころ匂わせる「子供の祈り」みたいな描写で、軍事パートでの興奮が興醒めしてしまう。

シン・ゴジラを待ちながら
というわけで、怪獣映画に「政治」を持ち込んだ2作品の特徴とその失敗を観てきたわけですが、ようやく、これらを克服した怪獣映画に我々は出会えるわけです。
キャッチコピーは「現実(ニッポン)対虚構(ゴジラ)」
【続きはこちら】
→シン・ゴジラの考察~怪獣映画の「政治」の描き方~連載③最終回 【「シン・ゴジラ」、正しい「国難」の描き方】
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