米軍内部を舞台にした犯罪モノ、クライムサスペンス映画をいくつか備忘録的に書いておきます。
「将軍の娘 エリザベス・キャンベル」
ジョージア州の陸軍基地内で若い美貌の女性大尉の他殺体が発見された。
憲兵隊からの通報を受け、陸軍犯罪捜査部のポール・ブレナー准尉(演:ジョン・トラボルタ)が捜査を開始する。
ところが、事件は思わぬ様相を呈していくのだった。
閉鎖的な基地内、ひいては陸軍の「影」の部分を描いた作品です。
女性の社会進出で、軍隊にも女性の割合が増え続ける中、難しい問題を提起しているとも言えます(日本の自衛隊も後を追っているので、他人事ではない)。
ところで、本作で被害者の父親であるジョー・キャンベル中将を演じているのがジェームズ・クロムウェルです。彼は東部エスタブリッシュメント、米国のパワーエリートが、ホントはまり役ですね。
今回の将軍もそうですが、特にアメリカ合衆国大統領をやらせると、そのカリスマ性を遺憾なく発揮します。オリバー・ストーン監督の「ブッシュ」での、ジョージ・H・W・ブッシュ(父)なぞ、まるで本人そのままでした。
「ア・フュー・グッドメン」
グアンタナモ米軍基地での海兵隊員殺害事件。
逮捕された同僚の兵士2名の弁護人となった海軍法務部(JAG)の法務士官ダニエル・キャフィ中尉(演:トム・クルーズ)は、被告らが上官であるネイサン・R・ジェセップ大佐(演:ジャック・ニコルソン)から、被害者に私的制裁を加えるように命令されていたことを突き止める。
だが、それを法廷で証明する手段がない。
キャフィは、ジェセップと軍事法廷(軍法会議)で直接対決することに・・・
軍隊内での暴力(私的制裁)はなかなか根絶できない宿痾ですが、それによる殺人事件を描いた法廷モノです。
何と言っても、たたき上げのTHE海兵隊といった貫禄のジャック・ニコルソンと、アイビーリーグ出の海軍のエリート法務将校の対比が。
ニコルソンの太々しさ。あれがある意味、米軍内の海兵隊の立ち位置と言っては言い過ぎか。
海兵隊は、陸軍と遜色ない装備と規模を持ち、更には海軍航空隊・空軍とは別に独自の海兵航空隊まで持つという特異な軍隊ですが、軍縮の時勢の時などに廃止論が度々出ても、その政治力で生き残ってきた節があります。
また、本作は、いわゆる忠誠問題、どこまで上官の命令に従うか?がテーマでもあります。
不適切な、非合法な、非公式な命令に対して、どう対応すべきなのか?という。
にしても、グアンタナモ米軍基地。キューバにある特殊性から、こんな役回りばかりですね。実際にもアルカイダ戦闘員の収容施設を作られたり・・・
「プレシディオの男たち」
サンフランシスコのプレシディオ陸軍基地で、パトロール中の女性憲兵が殺害された。
捜査に当たるのはアラン・コールドウェル憲兵中佐(演:ショーン・コネリー)と元憲兵でサンフランシスコ市警のジェイ・オースティン刑事(演:マーク・ハーモン)。
過去の因縁から反目しあいながらも、2人は事件の真相に近付いていく・・・。
以下ネタバレあり
うーん、なんでしょう。色々、惜しい作品ですよね。
まず、あんまり「基地内での犯罪」という舞台装置を活かせていないような・・・。普通の刑事モノと変わらない感じがします。
あと、コールドウェル中佐の娘(演:メグ・ライアン)のパートは果たして必要だったのか?あの親子葛藤パートと恋愛パートが無駄に思えてなりませんでした。
逆に、オースティンのかつての同僚だった被害者の女性憲兵の話を膨らませた方が面白かったのでは?最初に殺されて、ハイ出番終了、でしたから。
ショーン・コネリー主演なのに勿体ない映画かと・・・。
ひとつ面白いのは管轄権の問題ですね。
米国の警察事情は日本と全く違うので(警察が乱立して、管轄が競合・重複など日常茶飯事)。
故にサンフランシスコ市警と陸軍憲兵隊の合同?捜査みたいになっています。
★関連記事:アメリカの警察が知りたい【前編】~警察を廃止したり、作ったりできるの?
「犯罪捜査官ネイビーファイル」
映画ではありませんが、おまけでドラマシリーズをひとつ。
海軍法務部(JAG)の若き法務将校の活躍を描いた連続テレビシリーズです。
日本では第1シーズンと第2シーズンのみテレビ東京系で放送されていました。
世界各地の米海軍・米海兵隊での事件を追う1話完結型のドラマです。
当時の国際情勢も反映されており、バグダッドで交渉の為にフセイン大統領と会見したり(もちろん合成)、在沖縄米軍の回では登場人物(上級将校)が「沖縄を返還したのは間違いだった」(!)などと愚痴を言ったり、日本のドラマでは味わえないポイントが多々ありました。
ひとつ残念だったのは、第1シーズンのシーズン・フィナーレが作られずに、いきなり第2シーズン1話に飛ぶ(!)という謎の展開があって、未だに解せません。一体なんで??
日本で制作すると・・・
他にも、米軍を舞台にしたクライムサスペンスはあるのでしょうが、とりあえず、記憶のある限りは以上です。
ところで、日本でも、自衛隊を舞台にした映画・ドラマが、特撮・怪獣映画以外でも多く見られるようになってきましたね。
では、自衛隊を舞台にしたクライムサスペンスは、今後期待できるのでしょうか?
自衛隊の場合、憲法上、軍法会議が設置できないので、法廷モノは難しい。
憲兵にあたる警務隊を舞台にするしかないでしょう(小説は見かけますね)。
ただ、隊内で重大犯罪が起きた時に、本当に警務隊だけで捜査が完結するんでしょうかね?
なんだかんだと、警察が介入してくるような・・・(詳しくないのでわかりませんが)。
と言うのも、三島事件があるからです。
ご存じのように、作家の三島由紀夫が、市ヶ谷駐屯地の陸自東部方面総監部で、同総監を人質に立て籠った事件ですが、素人目には明らかに警務隊の管轄に見えるのですが・・・。
ところが、実際には、駐屯地には警視庁の捜査員・機動隊が投入されています。
東部方面警務隊に逮捕された訳じゃないんですよね・・・。
この辺の「事情」が昔から腑に落ちなかったのですが、先日手に取った下記↓の本で、色々とその辺りを探っていました。
まあ、どちらにしろ、自衛隊を舞台にしたクライムサスペンスだと、その「影」の部分がテーマにならざるを得ないので、まだまだ難しいかな?