「ゴジラ」(1984年版)は、それまでのゴジラシリーズ(第2作「ゴジラの逆襲」から第15作「メカゴジラの逆襲」まで)をリセットして、ゴジラ第一作の直接の続編として制作されました。
敵対する怪獣がいない本作では、ゴジラの敵は自衛隊、日本政府です。
後の「シン・ゴジラ」に通じる作品です。
実は本作にはノベライズ版が存在します。『新作ゴジラ』(講談社X文庫)です。映画版では描かれなかった場面などを見ていきます。
ショッキラス大襲来
映画の序盤で、第五八幡丸を襲撃し、船員たちをミイラ化させた巨大フナムシ。
映画では出番はそこまででしたが、小説では、この後も、静岡県の漁村・井浜町がショッキラスの大群に襲撃される場面があります。
町民が犠牲になり、警官隊や自衛隊が交戦することになるのですが、後年の平成ガメラシリーズ三部作を想起させるものになっています。
- 第1作の姫神島と東京の電車襲撃
- 第2作の札幌市営地下鉄襲撃
- 第3作の集落襲撃
ショッキラス襲撃が、映像化していれば、ホラー・アクション映画の側面も強く出ていたことでしょう。
新幹線をなぜ止めなかった?
ゴジラの襲撃で、東海道新幹線が有楽町マリオン横の高架で破壊されます。
事前にゴジラ襲撃が報道され、上陸も伝えられていたのに、なぜ、都心を走行していたのか?
その原因も小説では描かれています。その理由があまりに無謀過ぎて・・・(何やってるんだ国鉄!東京駅長!)。
スーパーXはどこから来たか?
西新宿でゴジラと死闘を演じるスーパーXですが、どこから来たのでしょうか?
首都圏の基地でしょうか?(なんせ首都防衛戦闘機ですから)
陸自所属ですから航空科のいる木更津駐屯地?霞ヶ浦駐屯地?立川駐屯地?
変則で空自だとしたら百里基地でしょうか?
残念「富士山麓基地」だそうです!
・・・?どこそれ?
富士山周辺は自衛隊施設が多いので(駒門、板妻、富士の各駐屯地や北富士・東富士両演習場)、スーパーXの秘密基地が新設されたのかもしれません。
「ゴジラ84」ファンにはいいかも・・・
基本的には、映画を忠実になぞりながら、エピソードや説明が追加されているものなので、映画ファンは一読してみると面白いかもしれません。逆に言うと、それほど小説にオリジナリティはありません。
ゴジラ84は、脱子ども向け、リアリティを追求しようとした意欲作・野心作なので、ノベライズもオリジナリティを追求し、当時なら、例えば、檜山良昭で、ミリタリー全開で小説化してみても、または、中村正䡄で国際政治全開にしても面白かったかもしれません。
ここからは脱線ですが、「シン・ゴジラ」なんかも、ノベライズには向いていると思います。それこそ、麻生幾に『宣戦布告』の雰囲気で書いてもらうとか。