【感想】ラース・フォン・トリアー監督「キングダム・エクソダス(脱出)」~「不満も謎も残ることを心得よ」

「善も悪もあることを心得よ」

ラース・フォン・トリアー

まさか、まさかの完結篇!

90年代に一世を風靡したデンマークのドラマシリーズ「キングダム」が25年の時を経て、いまさら完結篇が公開されました!

監督は北欧の鬼才ラース・フォン・トリアー。

上映時間は(ケツ)殺しの319分!

未完のまま終わるかと・・・

本作は、90年代にデンマークで社会現象にまでなった、カルト映画。

「北欧のツインピークス」などと言われました。

コペンハーゲンの巨大病院「キングダム」を舞台にした謎、謎、謎。

ツインピークスとかXファイルとか、あのホラーとミステリーを掛け合わせたような90年代独特の妖しい雰囲気を纏った作品です。

第2シーズンまで公開されましたが、主人公のひとりであるヘルマー医師役のエルンスト・フーゴ・イエアゴーや複数のキャストが亡くなり、第3シーズンは制作中止になってしまいました。

ところが、いまさらというか、終活というか、作ってしまったんです、完結篇を!

さすがに90年代なので、周りに知っている人は少なく、「春秋戦国時代の漫画が原作の?」と誤解されまくる始末。

それでも、なんとか同伴者を見つけて(一度もキングダムを観たことが無い!)、行って参りました上映時間6時間!

クリスマスには何が起こった?

モナはどうなった?

副題の「エクソダス」は「出エジプト記」?

色々と期待は膨らめますが、まあ、トリアー、あの「ダンサー・イン・ザ・ダーク」の監督ですから、まあ色々と、覚悟はしていました・・・。

※以下ネタバレあり

メタ視点?

開始早々、「キングダム」はドラマとして製作されたのもであり、あくまでフィクションであることを匂わせる発言が相次ぎます。

メタ視点なのか・・・。

ところが、前作の主人公ヘルマーの息子ヘルマー・ジュニアが登場するわ、ユディットが登場するわで、この辺の辻褄というかプロットは、やや破綻?少なくとも強引な展開をみせます。

もとより、監督に、前シリーズとの架橋する意志が無かったとも言えますが、これは、おそらく6時間という尺では短かったのも原因でしょう。

逆に、一度もキングダムを観たことが無かった同伴者(予備知識すら無し)は、「一応、ストーリーは理解できたし、それなりに楽しめた」と言うので、これはこれで上手く纏まっていたのでしょう。

にしても、ユディットの死は訳が分からんかった・・・。

もう一度くらいどんでん返しを・・・

ラストは結構、不満が残りましたね。

まず、早足過ぎる。

それに、カレンたちが簡単に騙され過ぎだし、モナが唐突に現れて、なんで君は悪魔側なの?という・・・。

こうなると、事態を逆転させる重要人物をもうひとり忘れていないか?と強く想う訳です。

誰かって?

そう、マリーです。

このシリーズの始りの原因だった少女マリーの霊はどうした?!

さんざん、ドルッセ夫人を助けたじゃないか。

「時間も老いもあることを心得よ」

まずは、終わって良かったという安堵感。

とにかく未完のまま終わるよりは何倍もいいです。

しかし、やっぱり最初に構想されたであろう「第3シーズン」を観たかった・・・。

今回のエクソダスでは、前シーズンの伏線や謎が回収しきれていません。

ヘルマー役を代役にしてでも製作して欲しかったモノです。

また、トリアー自身の老いもあるのか、前シリーズほどの緻密な伏線、プロットには及んでいないと言えますし、あそこまで尖っていいない。

ちょうど、この感じは、「エヴァンゲリオン」新劇場版シリーズと同じ。

延ばしに延ばしてしまっ14年。特に「破」と「Q」の物語の断絶や演出・世界観の変化は際立っています。

戸惑ったファンも多いはずです。

キングダムは14年どころか25年ですから・・・。

まあ、何はともあれ、キングダムのファンは、これで「キングダム」という牢獄から脱出(エクソダス)できたわけです(出エジプト記のユダヤ人よろしく)。

それにしても、ケツが痛い・・・。