【短い考察】映画「キャビン」~こんな秘密組織で世界が救えるわけね―じゃん(ネルフを見習え)

2012年、米

バイオハザード・シリーズに出てくるアンブレラ社は、ゾンビの基本原則の中でも抜きん出た企業の無能さを晒している。この多国籍企業の政治力が明白なものである一方で、その組織 としての能力は非常に疑わしい。

D・ドレズナー『ゾンビ襲来』白水社、2012年、125頁。

あらすじ

アメリカの大学生男女4人組が、湖畔にある古びたキャビン(小屋)で過ごすことになる。

やがて夜になり、4人を、想像を絶する恐怖が襲う…。

しかし、そんな光景をモニター越しに常時監視し、コントロールしようとする組織が存在した。

一体、何が起こっているのか?

※以下ネタバレあり

ホラーは苦手です

今回は、ホラー映画の記事です。

正直、ホラーは苦手で、知識もありません。

しかし、お約束のホラー設定にどんでん返しが付いてくる作品という噂を聞いて、M・ナイトシャマラン的なものを期待して視聴してみました。

あと、監督が「クローバーフィールド」のドリュー・ゴダードだったのもあり。

観てはみたんですが、とにかく、色々気になってしまい…、まあ、気の赴くままに書いていきます。

ホントに世界を救う気ある?

主人公らをこの状況に追いやる、秘密組織。

ここがホントになってない。

確かに凄いハイテクなんですが、とても世界を守る気を感じられない。

作中、各国での試みが失敗。残すは日本と米国の被験者のみになったようです。

こんな追い詰められた状況なのに、コントロールルームの緊張感の無さ。

最初、あまりこれは違和感が無かったんですが、物語が進んでいく内に、この「用意された惨劇」が何かの実験と言うより、その結果の成否自体が人類の存亡にかかわることが明かされます。

え?

そんな重大な状況なのに、こんな緩々なの?

賭け事までしちゃってますね。

そもそもこんな重大事なら、背広に制服(軍人)が混じってなきゃおかしいわけで。

軍人がいたら、あんな緩々にならんでしょ。

これほど重大な、実験ではなく実戦なら、映画「ウォーゲーム」の司令部くらいの規模じゃなきゃおかしい。

正面に並ぶ幾つものモニター、それと対座する何十人ものオペレーター。

あれは、コロラド州シャイアン山にある北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)の再現なんですがね。

ここはシャイアン山の地下に存在する事実上の地下要塞で、核攻撃にも耐えられると言われています。

近いところでは、アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」のネルフ本部発令所くらいは必要やろ。

だって世界の命運握ってんでしょ

管制官2人組で担ってましたよね。たった2人で。

これは、ほんとに世界の命運を賭ける、という状況では、スケールが釣り合っていない。

観ていて、違和感しかありません。

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危機管理がザル過ぎて泣いた

主人公らに、この状況が「用意された惨劇」であることを見抜かれてからは、この作品が面白くなるところなんですが、それにしても。あっさり施設内に侵入されすぎなんですよね。

そして、ここからがもっと酷い。

侵入に気づいて、完全武装の警備班が来るのは、いい。

主人公らが、管制室に逃げ込むのはいい。

進退極まった主人公が非常ボタンを押して、怪物どもが、一斉に開放されちゃうんです。

は?

フェイルセイフ一切なし?

なんで、そんな高いリスクのある重要なボタンが、なんの安全策も講じられずに。普通に押せるの?

その後の惨状を考えると、あのボタンは、暗号などでブロックされ、二重三重の認証を経ないと、使えないのが普通です。

それがフェイルセイフです。

ヒューマンエラーや悪意のある人間の侵入を考えれば当たり前。

あんな怪物の群、特級危険物は、P4(物理的防護レベル4、BSL4)以上の存在なんです。

P4はエボラウィルスとかです。

ホントに、ここの施設設計は0点どころかマイナスです。

あんなボタンひとつで、解放されちゃうわ、そのまま隔離区画からダイレクトに、一般ブロック(オフィス)にまで浸透(なだれ込む)しちゃうのは一体全体どうなんだ?

ここでも、エヴァンゲリオンをお手本にすれば、ネルフ本部も戦闘態勢が発令されると、通路に、隔壁がバンバン降りて来るじゃないですか。

怪物の隔離室と一般のフロアは、耐NBC隔壁やら耐爆隔壁やら、二重三重で防護されるべきだし、非常時の迎撃システムも相当用意すべきでしょう。

折角、ホラーのオマージュなんで、最後の最後に、アノ人が出てきちゃうくらいだから、映画「エイリアン2」の無人バルカン砲迎撃システムくらいは、登場して欲しかった。

ほら、天井から、扉が開いて、登場して、ウィーンて音出して、化け物どもを薙ぎ払うとか。

最悪、隔離区画を非常時に熱焼却するくらいの安全装置つけろよ。

応戦してる管制官2人組が小火器で応戦しているのは、まあわかるとして。

その最中に、非常用の毒ガスはどうしたって、叫びますが、あんな百鬼夜行どもに毒ガス効くんですかね?

警備隊も小火器ではなく、もっと重火器を用意しておいて然るべきでしょうし。

人類の存続を担う&化け物どもの動物園なら、最終的には自爆装置、それも、核爆弾の自爆装置くらい必要ですよ。

なんだよ毒ガスって。

ちなみに、ネルフ本部には、核自爆装置があって、テレビ版24話では、ミサトさんが押す寸前でしたよね。

百歩譲って、それがなくても、例えば、緊急信号を受信したら、米空軍の戦略爆撃機が核攻撃しに来るとか、

最後の最後で、最高責任者(館長?なんじゃそりゃ。長官とかにしろよ)のリプリーことシガニー・ウィーバー御大が登場。

え?1人?護衛無し?この状況なら特殊部隊とか引き連れてねぇ?

おまけに狼男に襲われて死ぬし。そこは、エイリアンだろ。

すべてがスケール不足

まあ、当然、これだけの陰謀・謀略なので、国家が関与していない訳がない。それも、少なくとも国連安全保障理事会常任理事国は承知しているレベルで。

なのに、この体たらくはなんなんでしょうか?

とにかく、スケールが全然足りないし、秘密組織・謀略機関としての能力が決定的に不足している。

思わず、バイオハザードシリーズに出てくるアンブレラ社を想起してしまいました。