世の中、本好き、読書狂いは多いですが、「本の為なら死んでもいい」というと、グッと数が減りそうですね。
ましてや、「本に殺されたい」という人は何人いるか・・・。
今回は、読書好き(狂い)のアナタにむけて、そんな本を2冊ご紹介したいと思います。
『幻詩狩り』川又千秋
あらすじ
1948年パリ。詩人アンドレ・ブルトンは、ひとりの東洋系青年から彼が書いた本を手渡される・・・。
その本には、想像もできない「秘密」があった。
1948年のパリ、現代の東京、人々を翻弄するその本がもたらすものは、人類の滅亡か?進化か?
「死」と引き換えにしても惜しくはない ?
日本SF大賞を受賞したSF小説です。
実在のシュルレアリストの詩人アンドレ・ブルトンが、パリで出会った本は、まさに、感染力を持った病でした。
その「死に至る病」に、幾多の人々が破滅していきます。
本編で、官僚がこう言う場面があります。
オリジナル、複製を問わず、この内容に目を通す行為を、人類に対する反逆罪のひとつに加えている。
本を読まれる方なら、伊藤計劃の『虐殺器官』を連想するかもしれませんね。
確かにそうなんですが、『虐殺器官』はジェノサイドに人を導く文法構造のお話なので、心理学や神経科学・情報科学といった趣なんですが、本作は「本」それ自体の存在が神秘主義的・超越的な存在となっています。
そこには脅威も恐怖もありますが、同時に、魅惑的・誘惑もあるのです。
あなたなら読みますか?
その「死」と引き換えにしても惜しくはない価値、経験がその「本」には秘められているとしたら・・・。
『アラビアの夜の種族』古川日出男
あらすじ
聖遷暦(ヒジュラ暦)1213年(西暦1798年)、エジプト。
迫りくる異教の敵ナポレオンのフランス軍に対して、支配階級奴隷アイユーブは奇策を企図する。それは、読んだ者を必ず破滅させるという『災厄の書』をナポレオンに献上し、彼を破滅させること。
徹夜必至の千夜一夜
なんかあらすじの導入だけで凄いです。
本でナポレオンの侵攻を阻止しようとするのだから。
内容は、超ざっくりに言えば千夜一夜物語。
夜な夜な、美しき女がアイユーブに語りだす驚異の物語・・・。
魅惑的な物語に、読者を捕えてしまう。
そして、これは警告です。徹夜します。
ページをめくる手が止まりません。
この物語に捕らわれるのは、ナポレオンではなくアナタなのです!
・・・要は、とにかく読んで下さい、と。