TBSドラマ「命なりけり・悲劇の外相東郷茂徳」【名作紹介】~加藤剛、北大路欣也、小林桂樹ら豪華共演

あらすじ

1945年、日本の敗色が濃厚となる、大命降下を受けた首相鈴木貫太郎(演:小林桂樹)から、外務大臣への就任を打診される東郷茂徳(演:加藤剛)。

かくして、日米開戦時の外務大臣は、再び外務大臣として、今度は終戦に向けて奔走することになる。

俳優座50周年記念番組

1994年に俳優座50周年記念番組として放送されました。

外務大臣東郷茂徳を主人公に1945年8月15日までの日本政府内の苦闘を描きます。

特筆すべきは、その豪華な顔ぶれ。加藤剛をはじめ、小林桂樹、北大路欣也をはじめとする重厚な俳優陣で描かれます。

脇を固める俳優たちも、いずれも名優ばかりの感。

敗戦の際の日本政府を描いたものとしては、映画「日本のいちばん長い日」が知られていますが、対して本作は、特に東郷外相にスポットを当てている作品になります。

ちなみに、「日本のいちばん長い日」は1967年に映画化され、2015年にも映画リメイクされています。

リメイクの「日本のいちばん長い日」と比較しますと、本作の登場人物の方が、史実の人物に酷似した俳優が起用されていると思います。

阿南陸軍大臣と米内海軍大臣が特にそうです。

逆に、鈴木首相は、リメイク版の山崎努の方が似ていた様に感じます。

東郷茂徳の苦闘

東郷は、和平派の鈴木貫太郎、海軍大臣・米内光政(演:早川純一)らと協力して、和平を実現しようとしますが、そこに立ちはだかるのが、陸軍大臣・阿南惟幾(演:小笠原良知)ら、陸軍です。

両者は論戦に論戦を重ねます。

他方、政務以外の東郷の部分も描かれ、そこでの彼の苦悩も描かれます。

娘・いせ(演:中川安奈)が憲兵に服装を咎められ闇米を持っていた際、憲兵士官は、相手が東郷の娘と知って、見逃そうとします。それに出くわした東郷は、憲兵に闇米を法に則り没収させようとします。

しかし、憲兵は「武士の情けです」と取り合わない。そして、「あまり困らせないでいただきたい。ああ、ご先祖は朝鮮の方でしたな。ここは日本人の心情理解していただきたい。」といって敬礼し、引き揚げます。

また、邸内に担当を持った右翼の男が乱入し、東郷に「天誅」を加えようとします。

「死ね!鬼畜米英に神州日本を売り渡す売国奴は死ね!」

間一髪、お手伝いの女性(演:市毛良枝)が手にしがみつきます。

「旦那様!逃げて下さい!旦那様が死んだら、戦争が終わらなくなってしまいます!!」

なお、男は東郷に迫りますが、男の腕に彼女が嚙みつきます。

「馬鹿!旦那様は、あんた達若い人を死なせない為に頑張っているんだよ!」

そこで警備の警官や秘書らが駆け付け男を取り押さえました。彼女は空襲で幼い子供を失っています。

また、これから鹿児島へ向かう若い海軍士官とその恋人の最後の逢瀬の場にも出くわします。学徒動員で鹿児島へ向かう道すがらのことでした。

外務大臣その人だと気づいたその青年は、戦争の愚かしさを思いながらも、日本をお願いします。と、東郷に後を託します。

昭和天皇

本作でその存在感を見せつけるのが、名優・北大路欣也が演じる昭和天皇。

最後の御前会議の場面は、観るものを圧倒します。

阿南陸軍大臣を諭す際の優しさと、ポツダム宣言受諾に従ってほしいと、臣下らに訴える姿。

「大丈夫だよ、阿南。国体は護持される」

「私の身はどうなっても構わない!どうか、私の決定に従ってほしい。」

昭和天皇を演じた役者としては、リメイク版「日本のいちばん長い日」の本木雅弘が、よく名前に上りますが、本木雅弘の昭和天皇が、昭和天皇の実像をリアルに演じようとする名演であったのに対し、北大路の昭和天皇は、迫力があり過ぎて、語弊を恐れずに言えば、実在の昭和天皇よりもカリスマ性があるような錯覚に陥る名演でした。

東京裁判

苦闘の末、ポツダム宣言受諾にこぎつけた東郷ですが、占領後、GHQから戦犯指名を受け、極東軍事裁判で禁固20年の有罪判決を受けます、

ドラマの終わり、獄中で、筆を執った東郷は言います。

「私には罪がある。戦争を防げなかった罪だ。しかし、東京裁判であげつらった罪は何も犯してはいない。戦争が罪と言うならイギリスのインド併合、アメリカのハワイ併合の罪も裁け。そして何よりも、原子爆弾の市街地への無警告投下。・・・私は戦うよ。」