直木賞と本屋大賞W受賞の『蜜蜂と遠雷』が2019年10月に実写映画化ですね!
恩田陸フリークの管理人としては、期待が高まります。
「恩田陸て、どんな作品があるの?」という人のために、恩田陸ワールドを楽しむための作品をご紹介していきたいと思います!
あ、ちなみに恩田陸は女性です(しばらく知らなかった・・・)
『Q&A』(2004年)
あらすじ
東京郊外の大型ショッピング施設で重大死傷事故発生!死者69名、重軽傷者116名。しかし、事故原因は判明せず。あらゆる関係者が召喚され事故当時の状況の聴取が始まるが・・・
「警視庁から各局、110番通報多数入電中・・・」
管理人が一番最初に読んで、恩田陸ワールドに引きずり込まれた一冊です。
一見、ホラーのようなミステリーのような、霧の中にいるような読書体験をさせてくれます。
作中、すべて、2人の人物の質問と回答だけで構成され、現実の供述調書を読まされている気がします。
大事故なのに、警察も消防も原因を発見できない。
当事者(被害者)たちの証言には信頼性はあるのか?
読みどころは、事故原因という真相究明もですが、人間の「客観性」の脆さみたいなものが興味深い。
当事者は客観的に語っているのだが、そこには、個人の背景や思想みたいなものが、行間に顔を覗かせて、その証言が揺らいでくる。
また、事故が都市伝説・フォークロア化したりと、さまざまな「余波」を生んでいく・・・。
『クレオパトラの夢』(2003年)
あらすじ
不倫相手を追いかけていった双子の妹を連れ戻すという目的で、冬の北海道H市に降り立った神原恵弥。
だが、某海外企業のエージェントである彼には、「クレオパトラ」と称する「何か」を探索するという任務が与えられていた。
一体、その正体とは?そしてH市の秘密とは?
旅先で読むのに最適!
恩田陸の作品には、閉ざされた空間で繰り広げられる、冒険やミステリーが多いです。
空間というのは、主に都市であって、本作のH市は明らかに函館。
他の作品でも屋久島や柳川、東京だったり、北海道の大湿原に孤立した全寮制の学校やら、はたまた名もなき地方都市だったり・・・。
この「閉ざされた」というのがキーポイント。
閉ざされているが故の、コミュニティの文化の閉鎖性・固有性が浮き彫りになります。
そこに触れるのが、いわゆる「旅情を誘う」あるいは「ノスタルジア」ということではないかと思います(恩田陸は別名「ノスタルジアの魔術師」と呼ばれています)。
そんな「閉ざされた」と正反対の「開かれた」のがグローバリズムではないでしょうか。
グローバル=画一化した世界に旅情・ノスタルジアは存在しません。
恩田陸の作品は、旅先で読むのに最適です。本作ならぜひ冬の函館で。
自分が、作品世界に迷い込んだような錯覚に陥るでしょう。
なお、本作の主人公、お姉言葉(!)の美男の凄腕エージェント神原恵弥は、シリーズ化されていますので、惚れてしまった方は『MAZE』『ブラック・ベルベット』もどうぞ!
『ネクロポリス』(2005年)
あらすじ
故人と出会える街「アナザーヒル」特別歴史地区。
日本の大学生ジュンイチロウ・イトウは、死者との交流行事「ヒガン」に参加すべくここを訪れる。
しかし、そこで殺人事件が発生し・・・。
スロウボートにうってつけの日
日英の文化が奇妙に融合した国「V・ファー」(おそらく英連邦の国家)、そのアナザーヒルという町を舞台にしたミステリー。
これも閉ざされた空間を舞台にした物語です。
冒頭一晩かけてスロウ・ボートに乗って、主人公一行が聖地アナザーヒルに向けて水路を航行する描写がなんとも旅情を誘います。僕も一度でスロウボートで気長に運河を旅してみたい!(まあ、体験できないから代償行為として小説で体験するんですがね・・・)
そして、アナザーヒルに到着してから起こる殺人事件。死者の力を借りての捜査。
たんなる殺人事件ではなく、「奇妙な日英融合文化」+「死者(霊魂)が存在する日常」するというテイストの仕上がりには、一気にその世界観に引き込まれます。
『六番目の小夜子』(1992年)
あらすじ
地方のとある高校。この学校には長年に渡って続く不思議な慣習があった。
3年に一度、生徒の中から「サヨコ」と呼ばれる生徒を選ぶという奇妙なものだった。
ところが、サヨコと同名の小夜子という美少女が転校してきたことによって、その歯車が狂い始める・・・。
サヨコはそこにいる・・・
これぞ、恩田陸ワールドの原点!なんといってもデビュー作。
高校という閉鎖空間を舞台に、一種秘教めいたゲームが展開される。
ジャンルとしては、ジュブナイルとも言えるし、ホラーでもある。というか、確定できない!
恩田陸作品の特徴には、「ジャンルが定かではない」というのがありますが(笑)、これもそんなお話(ていうか原点)。
作中で起こっている現象も、事件なのか事故?作為的なのか、単なる偶然なのか?思い込みなのか?ただただ暗中模索で不安感だかが増していきます。
恩田作品の学園物は、「人間が集まるところに立ち現れる‘何物か‘をテーマにしているように感じます。
なお、本作の主人公関根秋の家族(法曹一家!)は、他の作品(『像と耳鳴り』『図書室の海』『puzzle』)でも顔を出しますので、それもお楽しみに!
ちなみに、本作はNHKでドラマ化されています。
ややストーリーは違いますが、原作の雰囲気がよく出ていて、大変面白いので要チェックです!(小夜子役は当時16歳の栗山千明!)
★NHKドラマの紹介はこちらの記事へ
→NHKドラマ「六番目の小夜子」【名作紹介】~恩田陸のデビュー作を映像化した傑作連続ドラマ
また、この作品が気にいった方は同じく学園ミステリー『球形の季節』もおススメです。
『麦の海に沈む果実』(2000年)
あらすじ
「3月以外の転入生は破滅をもたらす」という伝承のある大湿原の中の孤立した学園。
二月最後に転校生水野理瀬はやってきた。
謎めいた友人たち、なくなってしまった1冊だけの書物、交霊会。
そして巻き起こる生徒たちの失踪。少女は真実に辿り着けるのか?
ただの転校生ミステリーではありません
恩田陸お得意の閉ざされた空間。そこで巻き起こる失踪事件。
出てくる登場人物は魅惑的で危険な匂いのする人々ばかり。
私が一番お気に入りなのは、女装している謎めいた校長です。もう最初から黒幕匂プンプンです(笑)。
この作品の主人公、水野理瀬はシリーズ化されています。
『三月は深き紅の淵を』『黄昏の百合の骨』『図書室の海』『朝日のようにさわやかに』『黒と茶の幻想』がシリーズないし、スピンオフ(?)になっています。
おわりに
・・・いかがだったでしょうか?
ここでは紹介しきれない作品がまだまだありますが、ご興味を持った作品がありましたら、ぜひ一度お読みになってください。
日常の中にぽっかりと開いた「何か」を見ることになるかもしれません。